塚口サンサン劇場の改革10年を記した人気連載! 書籍も発売中!

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東京がシネマシティなら関西にはサンサン劇場がある! イベント上映を「アイディアと手作り」で乗り切る“期待の映画館”の舞台裏

尼崎市、阪急塚口駅前にある映画館「塚口サンサン劇場」。
1953年以来の老舗映画館だが、最近は「イベント上映といえばサンサン劇場」という印象が強くもたれている。
インド映画に合わせてクラッカーを鳴らしたり立ち上がって踊ったりする「マサラ上映」をはじめとして、さまざまなイベント企画を実施。いまでは、ツイッターで「サンサンなら、あれもやってくれるのでは・・・!」という声が寄せられることも多いという。最近だと、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』もだ。
※8月7日に、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のイベント上映開催が発表されました。詳細はこちら

そんな中、先日ネットで話題となった、東京・立川シネマシティの「極上爆音上映」の記事
キネプレ編集部では、「東京がシネマシティなら、関西にはサンサン劇場がある!」と、改めてインタビューを実施。
「お客様のための文化祭」と言い切る同劇場の戸村さんに、話を伺った。

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2年半前にインタビューさせていただいたときから比べて、サンサン劇場さんも実績を積んでこられたと思うんですが、最初のマサラ上映が2013年6月。『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』でしたね。

そうですね、その年の春ぐらいに公開された映画だったんですが、シネマート心斎橋さん、神戸の元町映画館さんでマサラ上映が行われていたんですね。それをうちのスタッフが見に行って、うちの劇場でぜひやりたいと。そこから、見よう見まねではじめてみました。

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■サンサン劇場で観客大興奮 インド映画のマサラ上映会
http://www.cinepre.biz/archives/5982

―そこには、マサラ上映をするためのコーディネーターみたいな存在がいたわけではないんですか。

全然いないですね、マネをしただけです(笑)。「インド映画・・・うーん、じゃあカレー売ってみようか」とか、「インドビールも売ってみようか」とか。手探りでやっていきましたね。

―実は、参加者のほうが詳しかったりしたんですよね。

そうですね。マサラ上映もあのころはまだ知られ始めたばっかりだったんで、一部の人しか知らなかったんですね。それでそういう人たちがうちの劇場にきて、「マサラ上映はこういうもの」という見本を見せてくれたんです。だから劇場が企画して実施したけど、マサラ上映をつくってくれたのはお客さまだったんですね。すべての基礎をお客さまが作ってくれました。
たとえば「マサラダンスマニュアル」を作ってくれた人がいたり。しかもちゃんと劇場に連絡をくれて、「こんなのを作ったけど、配っていいですか」って相談してくれるんですよね。「はじめて来た人にもマサラを楽しんでもらいたい」という思いがあふれていました。

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―そのときに劇場側で心がけたことはあるんですか?

なるべくお客様の要望にはこたえよう、というのが基本スタンスでした。たとえばうちの劇場は幸いに天井が高いんで、クラッカーをいくら鳴らしても大丈夫だから、「いくらでもクラッカー持ってきてください」と呼びかけたり、地下1階にスペースがあるのでそこを着替え室として開放したり。
何よりスタッフが楽しんでやってましたね。スタッフから「あれをやりたい」「こんなのしてみたい」という提案がたくさん出てきたので、じゃあやろうと。それは「お金がかかるからダメ」「手間が大変だからダメ」なんてことは言わずに取り組んでいきました。

―インド衣装を着た方の割合も高かったですね。

ほとんどが自発的でしたね。劇場でも「着替えてもらっていいですよ」と呼びかけたんですが、多くの人が着替えて楽しんでました。着替え室もたくさんの人が利用してくれました。完全にお客さんに助けられましたね、マサラは。

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■インド映画で踊って年納め サンサン劇場でマサラ上映盛況
http://www.cinepre.biz/archives/8875

―そのあと、定期的にマサラ上映を実施されていく流れになると。

最初の『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』でマサラを知った人が多かったんですね。参加できなくてもマサラを知って、「私もやってみたい」という人が増えて。そうするとインド映画の上映が決まると「この作品ではマサラやらないんですか」と問い合わせをいただいたりするんですよ。「じゃあやろうかな」と増やしていました。
それに、あの年はちょうど、マサラ向きのインド映画がたくさん上映されていたんですね。それも追い風になったかなと。
それは翌年も続いていて、『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』のときは朝日新聞に載せてもらって、また新しい人が増えました。じゃあそういう人が楽しめる場を作ろう、という思いでマサラを定期的にやってきたな、という感じです。

―去年は、耐久マサラ上映もされてましたね。1日に2回、2日で計4回、マサラを連続してやる、みたいな。

ああー、やりましたね。ムチャな企画でした(笑)。

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■異例の4連続マサラ上映 塚口サンサン劇場で「耐久マサラ上映」
http://www.cinepre.biz/archives/16300

―ああいうのは戸村さんが考えるんですか?

僕一人でなくて、雑談の中で生まれる感じですね。「マサラ2本連続したらしんどいやろなー」「4時間やで」「しんどいやろな、お客さんも大変やろな」「じゃあやろか」という感じですね(笑)。

―でも劇場さんも大変じゃないですか、準備も片付けも要りますし。

それは確かにそうなんです。人手も増やしてますしね。でもまあなによりも、スタッフが楽しんでるんで、それはいいかなあと思います。

―あるとき取材に伺ったら、マサラ上映の終わり際にカラフルな風船を降らせるようになりましたね。左右の廊下でスタッフが待機して、風船を投げ込んでいくという。

やってますねー。マサラに風船は必要ないんですけどね(笑)。たまたまサザンのライブ見ていて、風船を使っていたんで、「ああ。これ楽しそうやなー、じゃあやろう」と(笑)。

―劇場スタッフさん、片付けも早いですね。

もうだいぶ慣れたんで、コツもわかりましたし。

―片付けのコツってあるんですか?

うまいこと紙ふぶきを集めるんですよ。軍手で触るか触らないかのところでさぁーっとやると、風でふわーっと集まってくるんですよ(笑)。そんなスキルが身についてますね、うちのスタッフは。

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―あと、大型掃除機も導入されてましたね。

ああ、あれはじつはお客様から提供していただいたんですよ。本当は落ち葉を拾う機械らしいんですけど、マサラ上映のあとの掃除している姿を見て、「自分はそういう仕事をしているんですけど、良かったら」とプレゼントしてくれたんですね。あれ、一気に吸えるんで、本当に楽ですね。

―いろんなお客さんに助けられているんですね。

本当にそうですね。だからお客さんの要望にはなるべく応えたいなと思ってます。

―その循環のおかげか、サンサン劇場さんへの期待値がこの2年ほどでどんどんあがってる気がします。最初にそういう期待が生んだイベント上映が、2013年10月の『パシフィック・リム』爆音激闘上映だったんじゃないかなと。

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■こぶし突き上げ大絶叫 塚口で『パシフィック・リム』激闘上映
http://www.cinepre.biz/archives/7596

確かに、あの時はすでにドラマがありましたからね。

―もともと大阪の劇場でやる予定でしたからね。立川シネマシティで有志が借り切りの上映をする、という話を聞いて、関西の人も有志で企画して。大阪でやる予定だったんですけど、直前で無理になってしまった。それで「行きたい!」という思いが蓄積されているところでサンサン劇場が「やります」と宣言したことで、うわーっと人が集まったと。

それでも、あんなにコスプレをする人があふれるとは思わなかったです(笑)。ファンの熱さを実感した夜でした。

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―サンサン劇場ならやってくれる、という声が、あの後増幅した気がします。去年はそういうことがあって、『劇場版 TIGER & BUNNY The Rising』の最叫上映があったり、という流れですね。

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■コスプレや声援で大熱狂 サンサン劇場で「タイバニ」最叫上映
http://www.cinepre.biz/archives/12573

あのときも、熱狂的に好きなファンが多かったんですね。コスプレをしたい、サイリウムを振りたい、という声があったんで、そればぜひやっていいですよ、と。
でも、他にどうもてなすか、を考えたら、「お金がない」というのがネックだったんです。フィギュアを飾りたいけど、高くて揃えられない。「・・・じゃあ、作ろう!」と、手作りの飾りをたくさん作りました。地下1階を開放して、休憩場にしてもらって、そこでも楽しんでもらうと。

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―そこで素晴らしいなあと思うのは、「作品に対する理解が深い」ことだと思うんです。ファンからしたら「ああ、ちゃんと作品をわかってくれてるなあ」という演出をしてくれることがうれしいんじゃないかなと。

ファンがそれだけ楽しみにしてくれてるんだったら、自分たちも応えないとといけませんから。タイバニもDVDを全巻借りて観ましたし、本も読みました。ファンのブログやファンサイトも研究して、「みんな、どういうところで喜んでいるのかな」ということを考えました。「折紙サイクロン」っていう、いつでも見切れてしまうヒーローキャラがいたので、「ああ、ではこれを劇場内に配置していろいろ見切れたら面白いんじゃないかな」とか。

―別のスタッフの方も、仮面を自作されてましたね。記念撮影用にかぶっていいですよ、という感じで。

作ってましたねえ。やっぱりわれわれには、「お金がない」んです(笑)。お金があれば、等身大のフィギュアを買って置いたり、そういった絵になることが可能になるんですけど、お金がないので(笑)、時間をかけて作ってます。まあ時間もあるかといわれればそんなにないんですけど(笑)、眠いのを我慢しながら労力をかけてます。

―イベント上映以外でもいろんなところでスタッフの手作りが印象的ですね。クリスマスツリーの飾りとか。

はい、いろんなものをお金かけずにやってます(笑)。

―ヒーローもいますしね。自作コスチュームを持ってきたアルバイトさんが。

s_ヒーロー1■塚口の映画館に“ヒーロー”見参 「予算2万、出勤はシフト制」
http://www.cinepre.biz/archives/15768

はい、まだいます(笑)。彼は面接のときに「休日はなにしてるの?」と聞いたら、「ミシンでコスチューム作ってます」とか答えが返ってきて、「これ、おもろいな」と(笑)。大学で映像を勉強していて、自分の作品のためのヒーローを作ってるんで、「じゃあたまには陽の目を見させてあげよう」と時折着たまま働いてもらってたりします。

―サンサン劇場さんのイベント上映は、SNSと相性がいい気がするんですけど。ツイッターでぶわぁーっと広まることが多いというか。

それは・・・SNSで広がる映画でやっているからです(笑)。

―あ、やっぱりそこは大事なんですね(笑)。

ツイッターで広がったりすると情報が拡散できるので、たとえば多少開催まで日がないイベントでも、そういった形で伝えられるなら「やろう!」と思えますし。イベントやったのに知られてなかったのでは意味がないので、ツイッターで伝えやすいかどうかは作品選びの根拠の一つになりますね。

―サンサン劇場さんは前から精力的にツイッターをされてましたが、普通の映画館は去年ぐらいまではそこまでツイッターを活用していなかったイメージがありました。

もっと自由にやっても楽しいのになと思います。やっぱりお客さんとのコミュニケーションの場だと思ってるんで。ツイッターから発信して、「こんな映画もやってみよう」という話になることもたくさんありますし。

―たまに映画と関係ない話もされてますよね。

がんがんやってます(笑)。このミュージックビデオを見てほしい、とか。お酒飲んでます、とか。

―基本的にはツイッターはお一人でやってるんですか?

はい、ぼくがやってます。

―ひょっとしてお休みの日もやってます?

はい、365日対応です(笑)。リツイートやリプライがすごいと、ずっとスマホがブルブルいってます。

―でも通知はオフにしないんですね。

そうですね、やっぱりちゃんと返事したいので、いつでもわかるようにしています。

―昔サンサン劇場のスタッフが、キネプレのトークイベントに出ていただいたときに、「サンサン劇場のツイッターはテロです(笑)」と話していたことがあるんですが・・・。サンサン劇場の名前を出したツイートをしたら、すぐコメント付きで捕捉されるという。

それは事実です(笑)。いろんな検索をして、どんどん絡んでいってます(笑)。お客さんも、何気なく言った一言に劇場からのレスポンスがあるとは思ってないので、びっくりされるみたいです。
でもまあ、それもエンターテインメントの一つだと思うので、ひっくるめて楽しんでもらえればと思ってます。

―これからもたくさんイベント上映を取り組んで行かれると思います。たとえば先日話題になった立川シネマシティさんは「極上爆音上映」というのが売りの一つですが、サンサン劇場さんは手作り上映、って言うのがキモですね。

そうですね、そもそも「爆音」とまでは言い切れませんから。何度も言いますがお金がないので(苦笑)、爆音と言いながらも機材を揃えるとかではなくできる範囲内でやるだけ(笑)。お金をかけたくてもかけられないことが多いので、こちらはアイディア勝負というか。

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―手作りとアイディアですね。

基本は、「文化祭」なんです。完成されてるわけじゃなくて、「アホやなあ」と思われながら楽しまれる存在でいいんじゃないかと思ってます。そしてあくまで主役はお客さんなんで、お客さんが最大限に楽しめるよう、心がけていきたいと思っています。

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―最近はこうしたイベント型上映も、いろんなところで見られるようになりました。

映画館で騒いで観る、なんて昔は邪道だったと思うんです。でも今の時代は、それも全部ひっくるめてアリだと、映画館に足を運ぶきっかけになるんじゃないかと思ってます。

―関西のほかの映画館の方も、サンサン劇場は一つの憧れだと聞いたことがあります。

ありがたい話です。関西でみんないろんなことをやっていきたいですね。関西だけの変な映画文化ができると面白いですね(笑)。

―今後もぜひ、いろいろ取り組んでいってください。

ありがとうございます。映画館はやっぱりお客さんのものなので、お客さんが喜ぶことを真剣に取り組んでいきたいと思っています。

映画館名:塚口サンサン劇場
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■住所 尼崎市南塚口町2-1-1
■TEL 06-6429-3581
■リンク 塚口サンサン劇場
塚口サンサン劇場は阪急塚口駅前に位置し、4スクリーンを擁する映画館です。
新作・話題作や過去の旧作だけでなく、近年は単館系作品の上映やイベント上映にも力を入れています。