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第8章 二刀流上映編「絶望を照らす、ひとすじの光」1/4

この章では、少し時間を戻すことにする。
まず「2013年問題」と呼ばれた、映画業界の変革について。

第1章の途中で、この2013年前後を境として多数の映画がデジタルで作られることになった、と述べた。
そのため、35ミリのフィルム映写機しか持っていない映画館は、新作をかけられなくなってしまった。
だがデジタル映写機とそのシステム(デジタルシネマパッケージ、通称DCP)の導入費用も高額のため、各地の映画館は以下の選択を余儀なくされた。
「フィルム上映のみの映画館」として、名画座的な旧作上映館になるか。
資金を調達してデジタル機材を導入し、デジタル上映館になるか。
廃業するか。

でも塚口サンサン劇場は、第4の選択肢をとった。
デジタルを導入しつつ、フィルム映写機も残し、デジタルとフィルムをともに活用していく、という判断だ。

簡単なようだが、フィルム映写機を残しておくのはスペースも必要だし、メンテナンスも大変、また専門の技師も雇っておく、など何かとカロリーがかかる。
そのため、デジタル化によってフィルム映写機を廃棄せざるを得なくなった映画館が多い中、サンサン劇場ではなんとかスペースを確保して、35ミリ映写機を4つのスクリーン全部に残した。
そして2013年2月23日より、デジタル映写機を新設。
これ以降、精力的な「二刀流上映」を進めていくことになる。

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二刀流の特性は、「どんな作品でもかけられる」ということだ。
後ほど述べる、番組編成についての話にも関連するが、旧作の映画にはフィルムしかないものが圧倒的に多い。
今の新作は当然デジタルだ。だが監督の過去作がフィルムの場合でも、二刀流ならば対応できる。監督や出演者の関連作を発掘したり、監督が影響を受けた往年の名作を合わせて上映することもできる。
自由で柔軟な番組作りが、可能になる。

また、フィルムで上映する、というのが売りになることもある。
デジタル上映が全国の映画館で多数実施される中、「うちはフィルムで上映します!」というのが、作品によっては話題を集めることをサンサン劇場は知っている。

なぜなら、同劇場に大きな変革をもたらした2011年の『電人ザボーガー』がまさにそうだったからだ。当時、全国で唯一同作をフィルム上映してくれる映画館として話題が広がり、各地からたくさんの人が訪れる転機となったのだ。

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ザボーガーは2021年に10年ぶりに再上映した(デジタルとフィルム両方)

そしてすぐに、このフィルム映写を残した決断を、大いに活用できる機会が訪れた。

同じ2013年の7月である。
実はこの時、塚口サンサン劇場が開館60周年を迎えた。
それに合わせて企画されたのが、「10人の映画監督と20本の不朽の名作」という特集だった。

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