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2021年12月12日(日)掲載
第7章 特別音響編「見つけたよ、私の戦車道」4/4


こうして岩浪美和さんたち音響チームの調整の下、さまざまな作品を特別セッティングの上映で届け始めたサンサン劇場。
ウーハーを常設し、スピーカーやアンプも新調し、「重低音ウーハー上映」と、そのあと始めた「Extraウーハー上映」の2本柱を、定期的に打ち出し始めた。

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Extraウーハー上映を行うスクリーン2

休館が明けてウーハーの常設を始めた時には、岩浪さんの音響調整を公開するイベント、なんてのも行ったことがある。音響に興味のあるファンたちがこぞってつめかけた。
「IWANAMI SOUND EXPO」と題した、岩浪さんの音響調整による映画特集も定期的に行い始めた。

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2019年・2020年の「IWANAMI SOUND EXPO」ロゴ

だが岩浪さんから学んだのは、重低音をきかせる調整だけではない。
前述したとおり、「映画の正しい音を、正しく伝える」という調整の心意気だ。

その思いを組んだ、戸村さんの同僚の方が、ここで一躍、音響調整担当としての役割を任されることになる。
その同僚の方は、最初の岩浪さんの来訪以来、ずっと現場でその調整を見て学び、手ほどきを受けた。
岩浪さんがいなくても、最高の音響が作れるように。
毎日の上映する映画を、より正しい環境でお客さんに届けられるように。
いつも心を配りながら調整してきた。

一方で、重低音を響かせるのには向いていない作品の時もあった。
たとえば、2017年の『ラ・ラ・ランド』がそうだ。
ミュージカルとして音は大事だったが、決して重低音を楽しむ作品ではない。
でもなんとかして、この作品の魅力を引き出したい。
そんな時こそ、岩浪さんたちの教えもより一層生きてくる。
重低音を響かせなくても「特別な音響」の上映はすることができるはずだし、それはつまり全ての映画を「より良く、正しい姿にすることができる」ということだ。

それ以降、塚口では、重低音に特化しない場合は、「特別音響上映」という単語を使い始めた。
『グレイテスト・ショーマン』『ロケットマン』『マンマ・ミーア!』などのミュージカル。
『リズと青い鳥』『響け!ユーフォニアム』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など京都アニメーションの繊細な作品。
『ボヘミアン・ラプソディ』『KING OF PRISM』『シング・ストリート』『ストリート・オブ・ファイヤー』などの音楽が重要な作品。
『機動戦士ガンダム』3部作や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』などのロボットアニメ。

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そうした作品を、自宅のテレビでは味わえないような、ベストに調整された音響で味わえる機会を作る。
これは今でもずっと続いている、塚口サンサン劇場の屋台骨だ。

「うちの音響設備なんて、実はそこまで大したことないですよ」
戸村さんは、自嘲気味にそう語る。
設備を新調していったとは言っても、シネコンと違ってかけられる予算には限度がある。ドルビーシネマやIMAX、立川シネマシティのような音響は、どうしたって導入できなかった。
でも代わりに、音響調整する技術と心構えは、どの映画館にも引けを取らないのではないだろうか。
戸村さんや同僚の方をはじめとするスタッフたちが、いつも調整に心を配り、最高の環境を作ろうとしている。
それはおもてなしの心であり、予算がかけられない映画館がかけられるサービス精神でもある。
だから塚口サンサン劇場は「音響がすごい」だけではない。
映画をちゃんと届けたい、映画館でしか味わえない時間を過ごしてほしい、という「気持ちがすごい」のだ。

これ以降、岩浪さんとの関係は、今でもずっと続いている。
「場末の映画館」
岩浪さんはサンサン劇場を、親しみを込めてそう呼ぶ。

場末だからこそできる努力がある。
場末だからこそひねり出せるアイディアがある。
場末だからこそ、かけられる愛がある。

そして。
場末でも愛してくれるたくさんの人たちがいる。
場末でも、わざわざ足を運んでくれるお客さんがいる。

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2011年の「ザボーガー後」には、「わざわざ遊びに行きたい」と思えるお客さんが生まれた。
一方、2016年の「ガルパン後」によく聞かれたのは、こんな声だ。
「塚口サンサン劇場の近くに引っ越したい」
「なんだったら、サンサン劇場の中に住みたい」
「東京にもサンサン劇場を作ってほしい」
たまに遊びに行くだけでは物足りない、ずっとサンサン劇場で映画を観ていたい。
そんな人たちがたくさん現れた。

そんな意味でも2016年は、この10年間の中でもまた一つ大きな転換点を迎えた、記念すべき年であった。

次章からは、イベント以外の塚口サンサン劇場の取り組みも紹介していきたい。




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終章 映画館で映画を観る楽しさを


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