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2021年12月14日(火)掲載
第8章 二刀流上映編「絶望を照らす、ひとすじの光」2/4


塚口サンサン劇場は、2013年7月に、開館60周年を迎えた。

正確に言うと、前身である「塚口劇場」の誕生が1953年。そこから数えての60年だ。
その60年間で、さまざまな日本映画のヒット作も生まれた。
日本映画の全盛期は1960年代と言われる。一時期は邦画のシェアが8割近くあった黄金期で、それ以降洋画の割合が増えていくものの、日本映画も多数作られ、ヒット作・流行作を生み出した。

塚口劇場はその時期をずっと経験した映画館だ。まさに「日本映画とともに歩んだ60年」だった。

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1953年に開設された「塚口東映劇場」(塚口サンサン劇場提供)

この開館60周年を機に、そうした日本映画の代表作に触れてもらいたい。
そう考えたサンサン劇場は、記念特集を計画する。
「10人の映画監督と20本の不朽の名作」
と題し、映画監督10人をピックアップ。7月から9月まで、それぞれ2作品ずつ合計20本を一挙上映した。もちろんフィルム上映だ。

溝口健二の『雨月物語』、成瀬巳喜男の『浮雲』、深作欣二の『仁義なき戦い』、大林宣彦の『時をかける少女』、相米慎二の『セーラー服と機関銃』、森田芳光の『家族ゲーム』、市川崑の『犬神家の一族』、木下恵介の『二十四の瞳』、小津安二郎の『東京物語』、黒澤明の『羅生門』。
いずれも巨匠の名監督。いずれも日本映画史に残るような名作ばかりである。

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ちなみに余談であるが、もう1本の作品は、これらに比べると知名度が少し劣るものの、見比べてもらうと面白い作品をチョイスした。
この辺りは、後ほど述べる「番組編成」のお話と関連するが、劇場の個性が生まれ始めていると言える。

この特集が好評だったため、10月からは「10人のスターと、20本の輝く名作」特集を実施。
今度は、俳優やスターたちにフォーカスを当てた企画で、美空ひばり、石原裕次郎、若尾文子、三船敏郎、原節子、勝新太郎、夏目雅子、高倉健、吉永小百合、長谷川一夫、という10人の作品を2作品ずつ上映した。

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それ以降もフィルム上映は続いていく。
たとえば高倉健、菅原文太という東映のスター俳優が2014年末に相次いで亡くなった際は、独自の追悼企画を実施。
この時もフィルム映写機を残していたことが功を奏した。

2人の多数の出演作のうちのほとんどは、デジタル化が進んでいないフィルムのみ。でも塚口サンサン劇場は多数の作品を上映することができた。1人5本ずつを1本1週間ごと、合計10本を一挙に上映する贅沢な特集企画となった。

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フィルムに関しては、戸村さんにも一つ、思い出がある。
『君の名は』(1953年、岸恵子主演作)という作品をフィルムで上映した時のことだ。
フィルムがだいぶ劣化しており、上映は何度も中断。
戸村さんたちは、来場客に丁寧に頭を下げた。
「満足な上映ができず、申し訳ありません」と。
そこで、「いえいえ、とてもうれしかったのです」と答えた老夫婦がいた。
「実は2人で初めて観た映画がこの作品でした。今回が2回目です。こうして2人でもう一度、映画館で観られたのが幸せなんです」
この話は、戸村さんの心にとても強い印象を残したようで、何回かトークイベントでも語っている。

おそらく戸村さんがフィルム上映を手がけるときは、このエピソードが常に頭にあるのだろう。
どの映画館でいつ、誰とどの作品を観たのか。それは思い出になるし、映画を観ることで、その当時のことも鮮明に思い出せる時がある。
映画館は、いつでもその時の思い出に帰れる場所でもあるのだ。

だから塚口サンサン劇場は、定期的に往年の名作のフィルム上映を行う。アニメ・邦画・洋画問わず。
むかし映画館で観た人は再びスクリーンでかかるのを楽しんでくれるし、DVDやビデオ、配信でしか観たことがない人には、映画館ならではの魅力を味わってもらえる。
そして、「初めて観る」という人にも優しい。なぜなら、いきなり旧作だけをやるわけでなく、そこには新作や話題作と絡めたサンサン流の上映意図があるからだ。
このあたりも、のちの「番組編成」の章で詳しく述べるとしよう。




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終章 映画館で映画を観る楽しさを


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