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2022年01月10日(月)掲載
第10章 おもてなし編「空に穴を開けよう」3/4
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ツイッターに続いて、今の塚口サンサン劇場の「ネットでのコミュニケーション」の大きな柱となっているのがアプリだ。

映画業界ではニュースメディアや感想共有サイト、そしてシネコンが運営するアプリはあるが、1館だけ・4スクリーンの“街の映画館”がアプリを作る、というのはとても珍しい。

配信を開始したのは、2017年11月10日。App StoreとGoogle Play両方で運用をスタートさせた。
上映情報はもちろんのこと、ウェブチケット予約、ツイッター、ブログ閲覧が可能で、特に「新着メッセージ」では、劇場からのイチオシ情報やおすすめ特集などの告知を定期的に流している。

「情報過多のこの時代では、SNSだけでは多くの方のお手元まで情報を確実に届ける事は難しくなってきている」と感じたという戸村さん。
前項で伝えたとおりツイッターでは精力的に情報発信をしているが、それでもフォロー数が多い人だと情報を見逃してしまい、上映が始まっていたのを知らなかったというパターンもよく見受けられたことから、その漏れを少なくしたいとアプリ開発に踏み切った。

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ちなみに余談だが、サンサン劇場のアプリは、もともとは「美容室用のアプリフォーマット」だという。ある会社からの提案があったそうで、予算的な兼ね合いもクリアできたことから、開発にGOを出した。
そのため他のシネコンのアプリとは少しインターフェイスが違って“映画館らしくないアプリ”だ。「なので、長い映画の名前はアプリに入らなくて四苦八苦してますが(笑)、まあ暖かく見守ってください」と戸村さんは頭をかく。

「シネコンではない単なる街の映画館」がアプリをわざわざ作ったことは、けっこう反響があったようで、第7章の「特別音響編」でも紹介した音響監督の岩浪美和さんもその取り組みを称賛した。

「ほとんどの情報にスマホでアクセスする若い人に向けてとても有効な施策だと思う。
黙ってても映画館にお客様が来たのは今は昔。こういうのを企業努力というのだろうなあ。」
とツイッターで呟いたほどだ。

そしてこのアプリ、いちばん戸村さんが活用しているのは「プッシュ通知」だ。
ツイッターを開かなくても、登録している人のスマホの画面に通知が出るのは、新しい情報の伝え方として気に入っているところだ。

最初のプッシュ通知は『シン・ゴジラ』上映決定のお知らせ。
一発目からユーモアをきかせて「緊急G警報発令」と通知したところ、けっこう反響があった。
それ以降、「プッシュ通知で少しでも笑わせて、かつその一言だけで何の作品か伝えられるようにしたら」と考え、ユーモアのある通知を続けている。

代表的なところだと、
「民よ!これが王の“完全”なるお姿であるぞ!」(『バーフバリ』)
「塚口には届けたい映画があるのです」(『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』)
「塚口補完計画」(『シン・エヴァンゲリオン劇場版』)
「塚口の呼吸 参参の型」(『鬼滅の刃 無限列車編』)
「XYZ」(『シティーハンター』)
「NEXT SUNSUN’S HINT」(『名探偵コナン』)
などがある。

中でも一番簡潔かつ爆笑を誘ったのは、
「エーーーーーオッ!!!」
だ。
塚口サンサン劇場にとってこれも外しては語れない映画となった『ボヘミアン・ラプソディ』の告知だったが、フレディ・マーキュリーのコール&レスポンスの文句だけで、何の映画かを伝え、通知画面を見た人を笑顔にさせた。

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(余談だが、サンサン劇場は『ボヘミアン・ラプソディ』では特別音響上映を行ったり、戸村さんがフレディのコスプレをして前説をしたり、「塚口の空に穴を開けよう」と呼びかけたり、と、塚口の魅力をフル活用して何度も上映した)

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写真提供:関西キネマ倶楽部

「会議中に画面を見て思わず吹き出してしまったり、仕事中に携帯を開けない分、通知画面だけでワクワクしたり。そんな感じで楽しんでもらえたら面白いなと」
戸村さんの、ツイッターで今までつちかってきたサービス精神が、アプリという手段を得て、より拡大していったように思う。

そしてこのアプリ通知は、もう一段階の宣伝効果を生んでいる。
前項のツイッターでも述べた「ツッコミどころがある方がツイッターで広がりやすい」というのをまさに体現しており、「塚口からまた面白い通知が来た」と通知画面のスクリーンショットをツイートする人が多くあらわれた。

――自分の「推しの映画館」が、また面白いことをやろうとしている。ぜひ多くの人の目に触れてほしい。「推しの魅力」をもっと知ってほしい。

そうしたファンの心理が後押しし、アプリの通知がツイッターの拡散を作る、という相乗効果を生み出している。

塚口サンサン劇場は、こうした形でネット上の「接客」を日々行っている。
(ブログについては次章で述べたい)
そこに通底するのはリアルな映画館運営と同じく、おもてなしの心と、やはりサンサン流のユーモアなのである。


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