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第7章 特別音響編「見つけたよ、私の戦車道」2/4

塚口サンサン劇場が、最初に重低音ウーハーをレンタル導入したのが、2015年8月
そのあとも2回レンタルをすることになる。
2回目は、2015年11月。上映作は、劇団☆新感線の「ゲキ×シネ」の『メタルマクベス』だった。

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その次にレンタルしたのが、2016年2月6日
2月の時は長期にわたるレンタルを考えた。様々な作品で、重低音を響かせた特別な上映をすることが、劇場の個性発信につながるのでは、と考えたからだ。

さらにその時は、「これこそ重低音を響かせて上映したい」と戸村さんが考えた作品があった。
サンサン劇場の歴史にまた一つ名を刻まれることになるアニメーション映画『ガールズ&パンツァー 劇場版』、通称「ガルパン」である。

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2012年からテレビアニメの放送が始まった作品の新作劇場版で、2015年11月に公開。
戦車を用いた武芸「戦車道」が大和撫子のたしなみとされる世界を舞台に、戦車道に打ち込む女子高生たちの成長や友情を描いた物語だ。
中でも、その戦車描写のリアリティが大きな話題を呼んだ。アニメーションとしてのこだわりが光り、戦車の駆動や砲撃はマニアをうならせた。
テレビシリーズから見ていた戸村さんも、「この映画はぜひうちでもやりたい」と考えた。
塚口での上映が2016年2月末からに決定し、それにあわせてウーハーを長期レンタルした、というわけだ。

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(C)GIRLS und PANZER Film Projekt

余談だが、このガルパンでは重低音ウーハー上映以外にも、いわゆる「サンサン流」と呼ばれるようなことがどんどん組み込まれ、レベルアップした。
ダンボール班が大きく脚光を浴びたのもこのガルパンだし、作中の舞台である茨城県大洗町と連携して、グッズや食事を手配した。現地からのビデオレターももらった。あんこう鍋をふるまった時もあるし、マサラ上映や、『パシフィック・リム』の時のような応援上映もやった。
サンサン劇場らしい盛り上げ方をふんだんに取り入れ、ガルパンファンからも一目置かれる劇場となった。

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そしてこの「ガルパン」初上映後の約2か月後に、同劇場は大きな決断をする。
レンタルをやめて、重低音音響を常設したのだ。
5月9日から13日まで休館し、その間に音響設備を刷新した。
一階のシアター4に重低音ウーハーを常設し、定期的に「重低音ウーハー上映」と銘打った企画を打ち出していった。

一方、設備を更新した際に使わなくなったサブウーハーがあった。
その再活用を考え始めたのは2017年。
地下2階のシアター2に設置し、こちらを「Exrtraウーハー上映」と名付けた。
それ以降は「重低音ウーハー上映」「Exrtraウーハー上映」の2本を定期的に実施していく。
少しずつ、「重低音に強い劇場」というイメージが作られていった。

このあたりのフットワークの軽さは、さすがと言えるかもしれない。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をきっかけに、音響へのこだわりが芽生え始めたのが2015年8月
翌年2月には長期レンタル、5月に常設に踏み切り、さらにその翌年2月にはシアター2でもウーハー上映を始めた。
そして、後ほど述べる「特別音響上映」までの道を、サンサン劇場はひた走っていくことになる。

前項で述べた、「自宅での映画鑑賞」との差別化の一つであり、「映画を映画館で楽しんでもらうため」の施策の大きな柱。
それを戸村さんたちは、「音響」に見出したのだ。

そして後日、この「重低音強化の上映」が、「特別音響上映」にステップアップするのだが、それには大きくわけて2つの出来事を必要とした。
1つは、『ラ・ラ・ランド』をはじめとする、「重低音強化が似合わない作品で、音響をどうするかを考え始めた」ということ。

そしてもう1つ。
それが、ガルパンをきっかけにした、音響監督・岩浪美和さんとの出会いであった。

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(塚口サンサン劇場のツイッターより)