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2021年11月19日(金)
間章 サンサン劇場は「テーマパーク」のような映画館

「実は、テーマパークというものをかなり研究したんです」
戸村さんは、ある時そう話してくれた。

塚口サンサン劇場は、イベントだけでなく、通常の上映時も劇場がなんだかにぎやかだ。
壁面には自作の新作告知掲示物がたくさん貼られ、地下1階のスペースには宣伝物のスタンディやポスターがずらりと並ぶ。
時には、ダンボールの造形物が展示される。
スクリーン内では、作品に合わせた楽曲を待機中のBGMにすることもある。

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階段には自作の告知ポスターがずらり(写真は2017年の『ラ・ラ・ランド』イベント時)
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ダンボール造形物が出現するときも

そしてイベントになると、さらににぎやかさは増す。
コスプレの人が集い、ある映画の時にはほら貝が鳴り、上映前には前説パフォーマンス、上映中にはクラッカーや紙吹雪、と、にぎやかさの枚挙にはいとまがない。

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『プロメア』マサラ上映の時

「まるで、テーマパークのようだ」
そういう感想もちらほらある。

それもそのはず、戸村さんは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンやディズニーランドなどのテーマパークをかなり研究したという。
一日中滞在しても、飽きずに過ごせる場所。
毎回行くたびに新たな発見や楽しみがある場所。
映画館のこれからの姿の一つとして、他の映画館だけでなく、異業種の空間を参考にしたところに、戸村さんの非凡さの一端がうかがえる。

そのテーマパーク研究の結果、戸村さんは
「お客さんは、アトラクションの感想より、むしろそれ以外の感想が多い」
ということに気づいた。
待ち時間にこんな話をしていた、次のアトラクションに向かう途中でこんなものを見つけた、路上にこんなものが隠されていた、こんなショーが行われていた、待機中の列でみた展示が面白かった、清掃員が楽しいパフォーマンスをしてくれた、などなど。
「それを映画館でもやろう、と思ったんです」
もちろん、テーマパークをそのまま真似するわけではない。
あくまで「映画館」として、テーマパーク的な要素を足すなら、という視点で取り組んでいる。

そしてそれは、ディティールにこだわる、ということでもある。
お客さんが喜び、興奮したり感動したりするのは、ディティールだからだ。
だからサンサン劇場は、細部にとことんこだわるのだ。

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謎解きイベントを行ったこともある

予算はかけられないから、ほとんどは手作りだ。
戸村さんは「文化祭のような空間」という。
手作りだからこそできることを、いつも考える。
それが、ダンボール作品だったり、壁面の映画紹介ポスターだったり、前説パフォーマンスだったりする。

手作りだからこそこだわれる細部がある。
手作りだからこそ、お客さんの琴線に触れるサービスを作り出せる。

塚口サンサン劇場は、そんな「手作り」精神が生み出した、ハンドメイドテーマパークなのだ。

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「花火大会」の時はやぐらが
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ヒーローがいた時も

塚口サンサン劇場に行ってきた、という観客のツイッター投稿は定期的に見られるが、その中でも「サンサンに遊びに来ました!」という投稿は、ひときわうれしいという。
「映画館をテーマパークのように、一日遊べる場所として過ごしてもらえたら」
そんなスタッフたちの願いがかなった瞬間だからだ。

「映画館で、映画を観る楽しさを」
そう思いを新たにして、取り組み始めたこの10年間。
サンサン劇場は、確実に、「映画館で映画を観る」という遊びにハマり始めた人たちをつくった。

戸村さんの想いはさらに広がる。
「そして可能なら、映画館に来る前や来た後も楽しんでほしい」
映画館にいる間を楽しくするだけでなく、映画館にいない間も、映画館を軸に生活を楽しくすることを考えている。
上映やイベントのお知らせを見てワクワクし、行きたいなと思いを巡らせ、作品について調べ、観てきた人の感想を見て心躍らせる。
行ったあとは、撮ってきた写真をSNSにあげたり、友達に見せたり、ブログに書いたりして余韻にひたる。

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戸村文彦さん。『ブルース・ブラザーズ』にあわせて。

「映画って、やっぱり余暇に楽しむものなんですよ。日常に彩りを添えて、日々を少しだけ楽しくする。映画も映画館もそういうものだと思いますし、じゃあ僕たちはその彩りをどう鮮やかにするかを考えたいなと思ってます」




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