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2021年11月05日(金)掲載
第2章 語る映画館編「戦おう。ここが俺たちの世界だ」3/4
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映画『桐島、部活やめるってよ』のトークイベントが塚口サンサン劇場で開催されたのは、2012年10月13日
同作を観た人が無料で参加できる企画として、地下1階のスペースに椅子を並べて会場とした。
結果、60名を超える参加者が訪れた。

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トークイベントでは、登壇者3名が同作について語りつつ、参加者にも意見を募った。
次々と手が上がり、さまざまな思いや解釈、自身の高校生活を振り返った感想などが集まった。
「“桐島”は一種の基準だと思う」
「全てが学校の世界で完結されていると感じた」
「視点を固定しないやり方が良かった」
「みんなの青春の戦いを祝福している映画だ」
などなど……。

戸村さんはこの時のことを、こう振り返る。
「同作については、ツイッターや映画の口コミサイトなどですでに様々な意見が出ていました。でも本当はみんな、リアルな場で『想いを口に出して語りたい』んじゃないか、と考えたんです。テキストだけで交流するより、ちゃんと口に出した方がよっぽと映画への想いを伝えられるはずですから」
そんな場所を作れたら、とぼんやり考えていたところに、この企画の提案があった。
「やろう」
即決して、実現した。
結果として、すでに同作を観た人、観たいと思っていた人、そんな人たちを呼び込むことに成功した。
戸村さんは「『朝まで生テレビ』並の激論でした」と回想するが、たしかにそれほどの熱気が地下一階スペースに生まれていた夜だった。
一部の人たちは、そのまま「二次会」として食事に行ったほどだ。

この塚口サンサン劇場でのイベントの盛り上がりも後押ししたのか、『桐島、部活やめるってよ』はさらに人気が続き、ロングラン上映を果たすこととなる。
そして、その盛況ぶりを聞きつけた同作のプロデューサーが10月末に劇場を訪れ、2回目のトークイベントを実施するほどとなった。

今まで単なる「町の映画館」に過ぎなかった場所で、映画ファンが集い、激論を交わす。
そして業界人が注目しはじめる。
それは、戸村さんや劇場スタッフの、映画作品を選ぶ眼と、即断即決、ファンの気運をつかむアンテナのたまものだった。

これ以降、ツイッターでは、「塚口」「サンサン」という文字が、よく見かけるようになっていく。
サッカーでよく使われる言い回し(「ベルリンの奇跡」「マイアミの奇跡」など)になぞらえて、「塚口の奇跡」と呼ぶファンも現れはじめた。

だがそこで終わらなかったのが、塚口だ。
もう一つの動きを生み出すこととなった。
盛り上がった空気感が、ファンやプロデューサー経由で、同作の吉田大八監督の耳にも届いたのだ。

それが結実するのが5年後の、2017年7月
吉田大八監督が塚口サンサン劇場を訪れた。

次の作品となった映画『美しい星』公開に合わせての来館だった。
吉田監督からの熱望があり、実現したという。

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「プロデューサーから、桐島の時いかに塚口が盛り上がったか、を自慢されて悔しかったんです」と語った吉田監督。
桐島のイベントについても、「公開後、少し落ち着いてきたタイミングでティーチインが開催されて、またすごく盛り上がったと聞いて。映画がなんとか首の皮一枚つながった、と思いました」と感謝を語った。

これまで、「セカンド上映をする二番館」としてしか知られていなかった映画館。
関西での上映も、大阪・京都・神戸でのロードショーが終わった後に、ようやく上映が実現していた、まさに「地方の映画館」。
そんな塚口サンサン劇場の名が、東京の映画業界にまで、少しずつ少しずつ、とどろきはじめていた。


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終章 映画館で映画を観る楽しさを


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