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人の繋がりを大切に―大阪のミニシアター「シネ・ヌーヴォ」20周年と改装に込めた想い

大阪・九条に1997年1月18日に開館したミニシアター「シネ・ヌーヴォ」。来年2017年で開館20周年を迎えるにあたり、支配人の山崎紀子さんにシネ・ヌーヴォの現在とこれから、そして館内改装工事に向けたクラウドファンディングの取り組みについて伺った。

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シネ・ヌーヴォで上映されている映画のラインナップは、国内外問わず、過去の名作から話題の最新社会派映画まで、大手シネコンではなかなかお目にかかれない作品が多い。特に観客から好評なのは、シネ・ヌーヴォならではの特集上映企画。過去には「女性映画の名匠 中村登の世界」「映画監督・深作欣二」など映画界の名匠特集上映がいくつも実施されてきた。今年からは「シネ・ヌーヴォ名画発掘シリーズ」という企画もスタートした。
山崎さんは「こういった企画を実現することは毎回大変です。けれど、皆さんがまだ出会ったことがない名作に触れる機会を、もっと増やしたいと想いを持って頑張っています」と話す。

20年という長い間、観客が名作映画に触れる機会を増やしたいと、独自のスタイルを持ち続けてきたシネ・ヌーヴォ。その上映作品選びについて山崎さんは語る。
「映画関係者の中には、当館の特色を理解してくださっている方がおられて『この作品はシネ・ヌーヴォさんで上映してはどうか』と逆にお声掛けをいただくこともあります。また、関西の他の映画館の方とお互いにおすすめ作品のお話をして、情報交換をよく行っています。そういった人と人との縁が作品選びに繋がることもあるんです」

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上映内容のみならず、建築物として味のある風貌もシネ・ヌーヴォの魅力の一つだ。内装と外装オブジェを手掛けたのは、大阪の劇団「維新派」の座長・松本雄吉さん。劇場内の深い赤色の椅子に座り見上げれば、水底から水面を見つめていると錯覚してしまうような、波模様の天井が目に映る。淡い照明のまわりには、水中から沸きのぼる泡の装飾が揺れていて、まさに「水中映画館」と称されるにふさわしい幻想的な非日常空間がそこにはある。

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維新派は決まった劇場を持たず、公演場所となる野外に劇団員自らの手で大掛かりな劇場を作り、終演後は解体するという独自のスタイルを持つ劇団。主宰の松本さんが今年6月に逝去したことを受け、近く劇団を解散することが発表されている。シネ・ヌーヴォはそんな維新派の息吹を感じられる、貴重な建造物でもあるのだ。
改装工事とその内容について山崎さんはこう語った。「今回予定している改装は、お客様より以前から要望の多い男性用トイレの洋式化や、劇場床面の修復といったのがメインです。決して全面的にリニューアルするという内容ではありません。現在来ていただくお客様の6割ほどは常連のお客様。中には高齢の方もいらっしゃるため、気持ちよく来館いただくために、より快適な劇場にすることを目指しています」

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現在は、年内の改装工事着工を目指し、クラウドファンディングで資金協力を募っている。協力金額のプランは様々だが、プランによって「シネ・ヌーヴォ招待券」や「20周年記念グッズ」がもらえるなど、多彩な特典が用意されている。「館内のどこかにお名前刻みます」「九条周辺を景山(劇場代表)と山崎がご案内します」というユニークなものもある。
おすすめのプランは『名画発掘シリーズの4作品選択権』ですね、と語る山崎さん。「当館の特色でもある特集上映のラインナップを決めていただけるんです。ご自身の好きな作品をスクリーン上で皆さんと共有できるなんて、普段できない体験だと思います」。
他にも、「シネ・ヌーヴォXプライベートシアター権」というプランも面白いのでは、と笑顔を見せながら紹介してくれた。クラウドファンディング実施についての想いを伺うと「日々の劇場運営に精一杯で私たちだけで資金を用意するのは難しい。皆様に支えられてきた劇場を未来へ繋げていくために、ご協力いただければ幸いです」と語った。

最後に、シネ・ヌーヴォ20周年の節目と、これからについて伺った。山崎さんは「私が支配人になって10年になりますが、毎日の上映に一生懸命で、気が付けばあっという間に劇場20周年を迎えていたという印象です」と振り返る。「そんな節目を迎えることができたのも、劇場に来ていただいたお客様やスタッフのお陰と思っています。当劇場は、映画好きの若い方が最終的にたどり着いてくれるような場所だと思っているんです。この劇場がそんな未来に存在し続けられるように、まずは来年、そしてゆくゆくは20年後の40周年を迎えられるよう、これからもご協力お願いします」
今回の改装に向けた取り組みは、シネ・ヌーヴォという映画好き達のための劇場を応援することを通じて、観客と劇場の繋がりをより深める取り組みの一つとなるだろう。
クラウドファンディングの締め切りは2016年12月26日まで。12月19日から着工、12月23日よりオープンを目指している。

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シネ・ヌーヴォからのメッセージ動画

詳細情報
■募集期限
~12月26日(月)

■映画館
シネ・ヌーヴォ
大阪市西区九条1-20-24、TEL 06-6582-1416

■サイト
シネ・ヌーヴォ館内改装工事クラウドファンディングページ
開館20年で上映作6千本以上 大阪のシネ・ヌーヴォが改装工事費支援呼びかけ
シネ・ヌーヴォ
シネ・ヌーヴォ山崎支配人インタビュー(2013年)