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2021年12月30日(木)掲載
第9章 番組編成編「さんをつけろよデコ助野郎」2/4


(※この項では、サンサン劇場の番組編成についてひもとく戸村さんと森田の会話をお届けします)

森田:塚口サンサン劇場は、まず10年前の『電人ザボーガー』の頃に、「多彩な作品をかけていこう」となったわけですよね。

戸村さん:そうです。今までは大作系・ファミリー系だけだったのが、徐々にミニシアター系の作品や過去の名作など、いろんなジャンルに手を広げるようになりました。

森田:その時に心がけたのが、「映画館にハードルを作らないようにする」だったと。

戸村さん:映画館を敷居の高いものにはしたくなかったんです。
でもやっぱりジャンルを絞ってしまうと、いままでは街の映画館だったのに、人によっては行きづらさというか、心理的なハードルができてしまう。それは避けたかったので。
ハードルは縦に上げるのではなく、横に広げるイメージでした。

森田:横に、つまりあらゆるジャンルの作品をかける、ということですね。

戸村さん:はい、我々は「幕の内弁当」をイメージしてました。色んな具材が入ってるお弁当は、誰でも一つは好きなものがあったりしますよね。
映画館の番組をそんな感じにできればいいなと思ってやってきました。

森田:幕の内弁当は、一方で、普段は食べないような具も、「せっかくだから食べてみよう」となりますね。
それは、サンサン劇場のお客さんからもよく聞く声です。「普段は観ないジャンルだけど、サンサン劇場でやるなら、せっかくだし観ようかな」という。

戸村さん:そういう声があるのは、すごくありがたいですね。

森田:そういうような番組を2011年から心がけてきて、一方では2013年にはデジタル映写機(DCP)を導入しながら、フィルム映写機も残した。デジタルとフィルム、両方で上映できる作品の幅がぐっと広がった。

戸村さん:過去の名作を上映できるのは、やりつづけたかったことなんです。2013年の開館60周年の時は「10人の監督特集」「10人のスター特集」をやりましたし、それ以降も例えば新作が公開された映画監督の過去作や、監督が若いころに観て影響を受けた作品などは、ほとんどフィルムですから。
そういう作品を新作に合わせて上映することで、映画をより楽しんでもらえるのかなと。いわば「温故知新」ですよね。「古きをたずねて、新しきを知る」。

森田:そうやって新作と旧作を関連付けで上映し始めたわけですが、そのあと転機として、2015年に行った「今敏監督の企画上映」があると伺いました。

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戸村さん:この時、原恵一監督の『百日紅 Miss HOKUSAI』と、細田守監督の『バケモノの子』という、二つのアニメーション映画の上映が決まっていたんです。2人とも、アニメーション界にとってなくてはならない、才能豊かな監督です。
ここで、もう1人注目してほしいと思ったのが、今敏監督だったんです。
今監督の新作を観ることはかないませんが(注:今監督は2010年に逝去)、このほぼ同じ世代の監督3名の作品を並べることで、見えてくるものがあるのでは、と思いました。

森田:それで、今監督の『千年女優』と『パーフェクト・ブルー』を上映したわけですね。

戸村さん:この企画をきっかけに、単なる温故知新だけでなく、「同時に観ることで、より相乗効果を生むことができる」という番組を意識し始めるようになりました。
それ以降も、たとえばジェームス・ブラウンとジミ・ヘンドリックスの映画にエミネムの作品をあわせたり、『ラ・ラ・ランド』に鈴木清順監督の『東京流れ者』『殺しの烙印』を持ってきたり、アニメ制作会社「サンライズ」の特集として『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』『COWBOY BEBOP 天国の扉』『伝説巨神イデオン 発動篇・接触篇』を上映したり、と、特集や企画に幅が出るようになりました。

森田:サンサン劇場のラインナップは、いまでもそんな感じで、よくよく見るとプログラムの流れに物語がありますよね。

戸村さん:せっかく映画館にお越しいただいているので、余裕があれば1本だけじゃなくて何本も観ていけるように番組を組めたらいいんじゃないか、と思ってました。
なので理想は、「関連する作品同士の上映終了と上映開始のタイミングがうまい具合にずれる」ような編成です。流れるように続けて鑑賞できますから。
もちろん毎回はかなわないのですが、たまに「よっしゃ!」って感じの番組編成ができたりするときがあります(笑)。

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「流れるように関連作が鑑賞できる」プログラムの一例

森田:お客さんの感想でも、「新作をきっかけに別の作品を観たら、面白かった」「新しい世界が知れた」「新作との関連がわかってワクワクした」という声が良く見られます。

戸村さん:そういうお声は、映画館を楽しんでいただいてるんだなと思ってうれしいです。

森田:新作に合わせて監督の過去作を持ってくるのは、お客さんも結構予想がしやすいですし、ほかの映画館でもやっていることですが、サンサン劇場は定期的に「こんなの持ってきたのか!」とビックリすることが多いです。
ワクワクさせる飛び道具をいつも仕込んでいる、というか。常にアンテナを張り巡らせているんですか?

戸村さん:そうですね。お客さんにワクワクしてもらってなんぼ、みたいなところがあるので(笑)、イベントじゃないところでも楽しんでもらうよう、色んなことをずっと仕込み続けています。
もちろん自分だけじゃアンテナは足りないので、若いスタッフの意見もたくさん聞きますし、お客さんの要望もすごく参考にしています。

森田:でも時折、お客さんの要望以上のものをぶち込んでくるのもすごいなと。
僕は「映画界のスマブラ」だと勝手に(笑)思ってます。人気格闘ゲームの「大乱闘スマッシュブラザーズ」では、毎回新キャラ参戦の時がすごく盛り上がって、徐々に情報を明かしていく。
「こんなところから持ってきたか!」「よく許可取ったな!」「予想の上をいかれた!」とはしゃぐファンのためのお祭りみたいな感じになってたんですが、サンサン劇場の「意外な上映作発表」の時の空気は、ちょっとそれに近いですね。

戸村さん:そう言われればそうかもしれません。いきなり告知せずにちょっとためたり、匂わせたりしてから発表したりしますし(笑)。
そういうワクワク感も含めて、映画館の存在を楽しんでもらえたらと思ってます。

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塚口サンサン劇場の階段には、上映予定作の告知がずらりと並ぶ。




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終章 映画館で映画を観る楽しさを


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