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10日間に及ぶ大阪アジアン映画祭が閉幕! 各受賞結果発表、香港映画がグランプリに

3月9日(金)から10日間にわたって開催された「第13回大阪アジアン映画祭」が3月18日(日)に閉幕。グランプリなど各賞の受賞結果が発表された。

国際審査員と受賞した皆さん

大阪アジアン映画祭は、毎年この時期に大阪で開催される関西最大級の一大映画イベント。今年は計53作品が一挙上映され、アジアの国・地域から150名以上の映画制作者が来阪し参加した。

閉幕前日の3月17日(土)にはABCホールにて授賞式が開催。グランプリ(最優秀作品賞)を受賞したのは香港映画『中英街一号』。デレク・チウ(趙崇基)監督と出演者のロー・ジャンイップ(盧鎮業)さん、フィッシュ・リウ(廖子妤)さんが登壇した。
チウ監督は「この作品は私の18作目ですが、いろんな困難にも直面し、8年かけて完成させました。この賞は私の映画人生の中で最も重要な賞だと思っています」と喜びを表明。「これを機に、この映画が香港でより多くの人に観てもらえるようにがんばりたいです。皆さんも引き続き香港映画を応援してください」と力強く観客に語りかけた。

受賞スピーチをするデレク・チウ(趙崇基)監督

中英街は、香港特別行政区と、中国の広東省深圳市が共同で管理する境界の町・沙頭角地区に今も実在する。中国で1965年に文化大革命が始まり、香港でも1967年に「香港暴動」が発生した。英国がその際に同地区を「辺境禁区」として封鎖して以来、沙頭角の住民は合法的な香港市民でありながら、香港への往来に通行証が必要といういびつな状況に置かれている。
チウ監督は、香港の歴史にとって重要な1967年の「香港暴動」と2014年の「雨傘運動」が類似していると感じ、本作のベースとしたという。
本作は香港に先駆け、3月16日(金)に大阪アジアン映画祭で世界初上映。登壇したチウ監督は感極まって涙を流し、観客は割れんばかりの温かい拍手で称えた。

デレク・チウ(趙崇基)監督と出演者の皆さん

審査委員会が最もアジア映画の未来を担う才能であると評価した人に授与される「来るべき才能賞」の受賞者は、フィリピン映画『ネオマニラ』のミカイル・レッド監督。
昨年の本映画祭でも『バードショット』が上映されたレッド監督は現在26歳。本作は長編第3作となる。今年も来阪して舞台挨拶に登壇したが、新作の撮影のためにすでに帰国しており、本作の主演女優ユーラ・バルデスさんがレッド監督の代理で登壇した。

ミカイル・レッド監督の代理で登壇したユーラ・バルデスさん

最優秀女優賞は、日本映画『東京不穏詩』に主演した飯島珠奈さんが受賞。飯島さんは「今回の作品は私の人生で一番思い入れの強い作品。一番のありがとうをアンシュル・チョウハン監督に伝えたい」と感謝の気持ちを震える声で語った。また、「これからも人生をかけるような、愛にあふれた映画が日本から、海外から作られていくことを願っています」と飯島さん。

最優秀女優賞を受賞した飯島珠奈さん

朝日放送が最も優れたエンターテインメント性を有すると評価した作品に授与されるABC賞は、台湾映画『私を月に連れてって』が受賞。
シェ・チュンイー(謝駿毅)監督は「この賞は私にとって大きな励ましとなります。また近い将来、新しい作品を携えて大阪アジアン映画祭に参加できればと思います」と喜びの言葉を述べた。本作は来年2月ごろ朝日放送で放映予定。

『私を月に連れてって』のシェ・チュンイー(謝駿毅)監督

スポンサーの薬師真珠が最も輝きを放っていると評価した俳優に授与される薬師真珠賞は、フィリピン映画『ミスターとミセス・クルス』主演のライザ・セノンさんに贈られた。昨年のイザ・カルサドさんに引き続き、2年連続でフィリピン人女優の受賞となった。なお、本作の上映について紹介したイベントレポートはこちら

薬師真珠賞を受賞したライザ・セノンさん

米国ニューヨーク市のジャパン・ソサエティー(日本映画祭「ジャパン・カッツ!」主催団体)がエキサイティングかつ独創性に溢れると評価した作品に授与されるJAPAN CUTS Awardは、日本映画『クシナ』が受賞。
また、芳泉文化財団により、日本初上映の60分未満の作品のうち最も高い評価を得た作品に贈られる芳泉短編賞には、金井純一監督の日本映画『CYCLE-CYCLE』が輝いた。

『クシナ』の速水萌巴監督

また同じ3月17日(土)にシネ・リーブル梅田では、日本を含むアジア映画界に多大な貢献をし、今後のさらなる活躍も期待されるスター性のある映画人に授与される「オーサカ Asia スター★アワード」の授賞式とトークイベントが開催された。
受賞した香港のチャップマン・トーさんは、「今回『受賞するために』初めて大阪に来られて大変うれしく思います。一般的に香港人にとって『大阪に来る』ということは『心斎橋で買い物をする』という意味で、『受賞するために』来ることはまず無いので、とても面白く感じています」とユーモアたっぷりに満席の観客に挨拶し、会場は笑い声に包まれた。そして「今、香港映画界は従来の姿が破壊されつつある状況だと危惧しています。私はそれを再生しなければならないと思っていて、現状を打開していこうとしています」と香港映画に対する熱い思いを述べた。

チャップマン・トーさん

そして翌日で最終日となる3月18日(日)に、ABCホールにて本映画祭のクロージング・セレモニーとクロージング作品『名前』の世界初上映が行われた。
まず観客賞の発表があり、受賞作品はパン・ホーチョン(彭浩翔)監督の香港・中国映画『恋の紫煙3』と発表されると、観客から歓声と大きな拍手が起こった。実は、前作『恋の紫煙2』も2013年に本映画祭で上映されて観客賞を受賞しており、2作連続受賞の快挙となった。
続いて、上倉庸敬・大阪映像文化振興事業実行委員会委員長が、「映画を通して大阪が心を通わせる拠点であるよう、皆さまの引き続きのご支援をお願いいたします」と挨拶し、クロージング・セレモニーが終了した。

観客賞に輝いた『恋の紫煙3』

クロージングを飾る日本映画『名前』が上映される前に、戸田彬弘監督が登壇して舞台挨拶を実施。
戸田監督は「大阪アジアン映画祭には5 年前に関わったんですが、今回戻ってこられて、とてもうれしいです」と笑顔で挨拶した。

クロージング作品『名前』の戸田彬弘監督

本作は複数の偽名を使って孤独に生きる男と、突然その男の前に「お父さん」と言って現れた女子高生の物語。原案は直木賞作家の道尾秀介氏。
戸田監督は「道尾さんはA4用紙8枚の原案を私に渡し、本作の制作を託してくださいました」と明かした。また、「完成披露試写会で道尾さんに本作を気に入っていただけて安心しました」と笑顔でコメント。
主人公・正男を演じる津田寛治さんは、数多くの映画やドラマで活躍する名バイプレイヤー。戸田監督は「いろんなアイデアを出してくださり、それでいて監督である私の意見を優先してくれました」と感謝の気持ちを明かした。また、女子高生・笑子を演じる駒井蓮さんは、撮影時は15歳で高校1年生。「オーディションでは、とてもフレッシュで無垢な感じが魅力的でした」と戸田監督。ただ、演技はほぼ未経験だったので、撮影前に数日間リハーサルを行ったと明かし、「演じる際にはまずは自分自身を信じるよう伝えました」と当時を振り返った。本作は6 月30 日から全国公開が予定されている。

クロージング作品『名前』

「第13回大阪アジアン映画祭」は3月18日(日)に無事に閉幕を迎えた。来年の春に次回を開催予定。なお、関連イベント「アジア映画ブックフェア」は3月30日(金)までMARUZEN & ジュンク堂書店梅田店の5階にて開催している。

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