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『ホームレス理事長』をイラストレビュー/ペンギンシネマ放談 vol.02

ペンギンシネマ02
今回の映画は、東海テレビ制作のドキュメンタリー『ホームレス理事長 退学球児再生計画』です。
「高校を退学した元高校球児達に野球と教育の場を与え、人生の再チャレンジを支援する」そんなNPO法人ルーキーズの理事長や生徒を追いかけたものです。

 

設立から2年、定員割れや組織運営の甘さから理事長は金策に追われ、住居も失いネットカフェで寝泊まりする日々。運営そっちのけで金策に走り回る理事長はスタッフともぎくしゃくしています。
ルーキーズの存続を一人で抱え込むあまり、撮影スタッフに土下座で借金をお願いし、ついに闇金まで手を出して・・・というのがこの映画の流れです。
理事長がどうなってしまうのか、ハラハラという表現の10倍くらい心臓に負担をかける映画でした。観終わって数日経ちますが、まだもやもやしています。

ペンギンシネマ02理事長1
『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(C)東海テレビ放送

それは、この映画が「若者を導く立派な指導者」「皆が幸せになる美しい結末」などの明快な解答を示さないからです。

例えば、理事長と共に若者の指導にあたる野球監督がいるのですが、彼は以前生徒への体罰での逮捕歴があります。彼がルーキーズで、生徒を平手でひっぱたく(しかも何回も!)光景もカメラは映します。

理事長も、志は高くても組織の運営能力は著しく低そうで、周囲が呆れている雰囲気が画面を通して伝わってきます。ネットカフェに寝泊まりしながら、「ニートやフリーターを救いたい」と語るシーンでは、いや、中年で闇金に借金してホームレスのあなたの方が彼らよりまずいでしょう、とつっこみたくなります。

ペンギンシネマ02理事長2
『ホームレス理事長 退学球児再生計画』(C)東海テレビ放送

実際、この映画が当初東海テレビで放映された時、監督の体罰や理事長の無策ぶりへの批判が殺到したそうです。

その批判も含めて、この映画は世の中を映し出した作品なのだと思います。
理事長が救おうとする元高校野球児は、高校野球というピラミッド型の中で、再チャレンジがきかない仕組みから滑り落ちた子です。理事長への批判は、今の世の中もこの制度のように、「行動に必ず責任と成果を求める」息苦しさを抱えているからなのではと思いました。

「ここが無かったら生きていけない」
インタビューでそう答えた生徒が、ルーキーズで救われたことは事実です。ホームレスになってもなお、ルーキーズを存続させようとした理事長がその場を与えた事は間違いないのです。
ただそれだけで、とてもとても凄い事だと思うのです。

■参照リンク
『ホームレス理事長 退学球児再生計画』公式サイト
http://www.homeless-rijicho.jp/
ビンタに土下座金策・・・話題沸騰『ホームレス理事長』が関西上映[ニュース]
http://www.cinepre.biz/archives/11084

「ペンギンシネマ放談」は、毎月第1月曜日に配信します。
次回は4月7日(月)更新予定。お楽しみに。
(ブログ「着ぐるみ追い剥ぎペンギン」さまからの寄稿です)