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奈良で“カンヌコンビ”対談 是枝・河瀨両監督が登壇

奈良の定例上映イベント「ならシネマテーク」で『誰も知らない』が上映。同作監督の是枝裕和さんと、なら国際映画祭理事長の河瀨直美さんがトークを行った。


登壇した河瀨直美さん(写真左)と是枝裕和監督

「ならシネマテーク」は、2013年4月に奈良市でスタートした上映イベント。主催は、河瀨直美さんが理事長を務めるなら国際映画祭実行委員会。映画館がなくなってしまった奈良市で、「移動型映画館」として毎月1作品を巡業上映している。
7月12日(金)~14日(日)には、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004年)が上映。14日(日)の上映後には是枝監督が登壇し、河瀨直美さんと対談を行った。

同作で主演の柳楽優弥さんがカンヌ国際映画祭で日本人初となる最優秀主演男優賞を受賞。さらに最新作『そして父になる』(福山雅治主演)が同祭で審査員賞に輝いた是枝監督。また河瀨直美さんは『萌の朱雀』(1997年)が同祭カメラ・ドールを、『殯の森』(2007年)がグランプリを受賞。2009年の同祭では「金の馬車賞」を受賞したほか、2013年にはコンペティション部門の審査員をつとめるなど、カンヌにゆかりの深い2人のトークとなった。


『誰も知らない』撮影時のエピソードを披露する是枝監督

まず是枝監督が「10年近くのー前の作品なのに、こんなにたくさんの方に観ていただいてうれしい」とあいさつ。河瀨さんは「色あせない作品。10年前のものとは思えない」と話した。
その後は是枝監督が撮影時のエピソードを披露。台本を読まず自然体で挑むYOUさんや、主演の柳楽優弥さんの声変わり、次男役の少年の演出の苦労などについて話した。
同作が、1988年に東京の巣鴨で起きた実際の事件をモチーフにしていることもあり、河瀨さんは「育児放棄されている子どもがたくさんいるという今の日本の現状がある。何もできない自分がいるけど、是枝監督の作品は、そんなわたしたちになにかしらの希望を与えてくれている気もします」と解説した。


なら国際映画祭の理事長を務める河瀬直美さん

また、先日のカンヌ映画祭や『そして父になる』についても言及。映画祭という場所について是枝監督は「映画という芸術が集まる、とても豊かな場所。優劣を競うだけじゃなくて、そういう空間に自分も参加することができた、という喜びで胸がいっぱいになりました」と振り返った。「メディアの方は、日本の映画が賞をとった、とらなかっただけでなく、そういうところもちゃんと伝えてほしい」と呼びかける一幕もあった。

トークの最後では質疑応答も行われ、ドキュメンタリー映画について、また子育てについてなど、多くの意見や感想が交わされた。トークは1時間半を超える長丁場となったが、満席となった会場では老若男女多くの方が、監督2人のトークに聞き入っていた。


多くの観客が2人を拍手で迎えた

「ならシネマテーク」は、毎月第2週の金~日に奈良市内各所で開催されている。

■サイト
「ならシネマテーク」公式サイト
http://cinematheque.nara-iff.jp/
なら国際映画祭
http://www.nara-iff.jp/
猿沢池にレッドカーペット 「なら国際映画祭」開幕へ【キネプレレポート】
http://www.cinepre.biz/?p=1774