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2013年06月24日(月)
[中の人番外編]元町映画館・林さん

「ミニシアターの中の人」番外編。キネプレ編集部による、「中の人」インタビューです。

元町映画館のオープンは2010年8月。もうすぐ3年になるばかりの若いミニシアターだ。幼いころから映画が大好きだった藤島順二さんが支配人として、神戸の地に開館させた。
個人経営の映画館が減り、大手シネコンが隆盛している中、時代に抗うかのように「地元の人たちのための映画館」を目指して設立。それ以降着実にファンを増やし、いまでは元町に密着した映画館として、多くの人に親しまれている。

今回話を聞いた林さんは、同館で企画や宣伝などを担当している。
ここで働くまでは、西宮の地域情報紙の仕事をしていたという林さん。それ以前は映写に携わったり、自分でカフェなどの自主上映会を手がけたりと、映画に浸る生活をしていた。映画が好きで上映するのも好き。そんな林さんが、ある日の新聞で「元町で映画館が準備中」という記事を読み、「ボランティアでもいいから手伝わせてほしい」と連絡した。
そのままオープン準備から参加。それ以降2年間、ほとんど休みなしで、企画に運営にと走り続けている。
「全員が完全なプロというわけではなかったので、開館当初は大変だった」という。わからない業界用語も多く、手探りで運営を進めてきた。開館後2年を超え、新しいスタッフも入ったことで、ようやく様々な企画を行うことができるようになったと林さんは話す。

元町映画館林さん

元町映画館の座席は66席。席数の割に広い空間が特徴だ。
通路がゆったりとしているほか、前後の幅も広めにとっている。舞台あいさつによく使われるステージも大きめ。「ゆったり鑑賞していただけるのでは」と話す林さん。
手前の受付兼ロビーでは、さまざまな映画のチラシを配布。「新しい映画と出会える場所にしたい」と言い、これからの拡張や進化も考えているという。
また、最近2階にフリースペースを作った。現在は同館主催のイベントでの準備や、作品展示などに使用している。「今後もいろいろなことができるスペースとして活用していきたい。常設ギャラリーや交流スペース、観客の待合場所としてもどんどん使っていけるように整備したいですね」と林さんは話している。

元町映画館では先日のゾンビ映画特集の際に、ゾンビメイクをした希望者で商店街を練り歩く催しなどを実施し、話題となった。他にもミランダ・ジュライ監督『ザ・フューチャー』の上映時にはガーリー女子向けの雑貨店とコラボしたり、会田誠の『駄作の中にだけ俺がいる』の際には「みんなの駄作展」を催したり。さまざまなユニークな試みを、アクティブに打ち出している。
「特集上映もいろいろやっていきたいですね。いつも企画を考えながら、タイミングを見計らっています」と話す林さん。自主配給に近い作品が増えてきたことで上映依頼も増え、普段は新作でスケジュールが埋まることが多いが、そのスキマスキマで「おもしろい特集」も企画していきたいと語る。

元町映画館館内

「元町映画館の特色って何だと思いますか」そう聞くと、「最初は“独自色”というのを打ち出すことを考えていたが、今では気にしていない」という答えが返ってきた。林さんは「一番ごった煮なのがうちなのかなと思います」と話す。
ホラー作品などは最初上映していなかったが、「パン・ホーチョン監督の『ドリーム・ホーム』をかけてからタガが外れたかもしれません」と笑う林さん。もともと神戸でホラーやカルト、B級作品を上映する映画館は多くはなかった。三宮のシネフェニックス(2011年5月に閉館)もなくなり、B級枠がますます減ってしまった。「それをうちが引き受けようか」そんな思いもあり、いまでは分け隔てなく上映している。「うちがいまでは、神戸で一番B級枠が多い劇場になったのかもしれません」林さんはそう振り返る。

これまでは歴史も浅いこともあって、他の映画館の個性をうらやましく思うこともあったという。でも今は違う、と林さんは話す。
「自分がもし別の立場からこの映画館を見たとしたら、一番おもしろそうに見えるかもしれない」そう感じるようになった。幅の広さ、ごった煮感が、神戸の中では個性になってきている。「ゾンビイベントができるのは、うちぐらいかもしれないですからね」そう笑いながら話してくれた。

元町映画館入口

生粋の映画好きの人は、「良い映画なのになぜ人が来ないんだろう」と思ってしまいがちだ。その点、林さんは「私の感覚は少し異なるので、違う飛躍ができるのかな、と思ってます」と語る。
それはつまり、「どうやって映画をたくさんの人に観てもらうか」まで発想できるかどうか、というところなのかもしれない。自分でアイディアを練り、様々な企画を打ち出す。今まで自分で上映会をやっていた経験も総動員しながら、映画を一つの商品としてとらえ、常に新たな売り方を模索する。
「私しかできないことは、こういうことなんだ」そう思うようになってきた。すべては「お客さんに映画館へ足を運んでもらう」ためだ。
「まわりにも多いんですよ、めったに劇場に行かない人は」そう苦笑する林さん。「あの映画良さそうやなあ、観たいなあ」というところから「実際に観る」までにはすごいへだたりがある。そして「自分も生粋の映画好きではないから、その気持ちはよくわかる」という。でもだからこそ、そのへだたりを何とかぴょんと飛び越したい。劇場一歩手前の人を何とか引き込みたい。林さんを動かしている情熱の正体は、そんな思いだった。
「いろんな娯楽がある中で、映画の優先順位が低くなっている。でも映画は映画館で観てもらいたい。全然違うから。だからその企画を考えている」と話す。

「いろんな楽しみ方を提案したいんですよ」最後にそう笑いながら話してくれた林さんは、今後のやる気に満ちているように思えた。もともとの映画好きだけでなく、普段は劇場に足を運ばない人に、映画館への導線を作る。入り口としての映画館でありつづける。そんな思いが、これから花開くことを期待したい。



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