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映画祭の新たな動き vol.1[祇園・新世界・宝塚]

関西各地でこれまで、多くの映画祭が開催されてきた。
そして今、“新たな映画祭”の仕組みが生まれようとしている。
今回は京都、大阪、兵庫それぞれの土地で起こった、新たなムーブメントを紹介したい。

祇園の地に花開く、新たな映画祭の形

2007年より京都で開かれている祇園天幕映画祭。
同祭は、祇園商店街振興組合と京都造形芸術大学教授の林海象監督が提携し、「祇園地域における人の流れを作る」ことを目的にスタートした。7月に行われる祇園祭に合わせて、商店街の路上にスクリーンを設置。道行く人に気軽に映画を観てもらうことを目指し、毎年新たな企画を打ち出している。
2012年からは、同大学卒業生らで結成した「月世界旅行社」が企画運営に参加。月世界旅行社はもともと自分たちで自主映画を制作するほか、巡業上映や定期上映会などを積極的に行ってきたチームだ。

彼らが企画した一つが、「祇園CMアワード」というもの。「外から祇園の街はどのように映っているのか」を映像の形にして募集。その作品をYouTubeで公開するほか、映画祭当日もスクリーン上映。その中から優秀作を選出するコンペティションとなっている。

作品の募集だけでなく、制作の手助けも積極的だ。
今年は「祇園の美」をテーマに作品を募集したが、希望者には祇園の商店街でのロケサポートを実施。すでにいくつかのチームが利用し、風情たっぷりの路地で撮影を行ったという。


CM撮影の様子(祇園天幕映画祭提供)

祇園天幕映画祭のユニークさは、路上にスクリーンを設置するのももちろんだが、その土地に密着したCMを募集するというところだ。祇園という街に映像の新しい文化を根付かせることを目指し、今年も開催に向けて準備が進んでいる。
担当者は「祇園祭を楽しんでいるお客さんが、スクリーンの存在に気づいて足を止め、観ていくような気軽さで全然構わない。映画の野外上映という非日常な体験をしてもらいたい」と呼びかけている。
京都の中でも有名な観光地・祇園を舞台に、今年はどんな作品がスクリーンをにぎわせるのだろうか。
祇園天幕映画祭は、7月15日(月・祝)に開催される。

■リンク
“祇園の美”どう描く? 30秒CM作品を募集、表彰も【キネプレニュース】
http://www.cinepre.biz/?p=5605
祇園天幕映画祭
http://www.giontenmaku.com/

新世界の魅力、映画で伝えたい

「新世界映画祭」実行委員の安福さん(写真右)とHirokoさん

大阪の新世界は、昨年に100周年を迎え、多くの催しが行われた。
それを追いかけるように、今年は映画祭の企画が始動。元ボクサー赤井英和さんの自伝を映画化した新世界が舞台の作品『どついたるねん』をはじめ、同地にゆかりのある作品を上映するという。
企画者は、『どついたるねん』にほれ込んで新世界を訪れた安福さん。もともと映画好きとあって、「新世界で映画祭を開き、多くの人に新世界の映画を観てもらいたい」との思いから同祭を企画した。

安福さんらは昨年、映画祭のPRを兼ねてフリーペーパーを作成した。新世界の街の歴史を紹介するとともに、『どついたるねん』を取り上げるなど、今回の映画祭への意気込みがつまっている。
「映画を通じて新世界のファンを増やしたい」と語る安福さん。「大阪が好きな人、新世界が好きな人、映画が好きな人。そんな人たちが集まって、と一緒に映画を観たい。そして映画の舞台となった新世界という街を楽しみたい」その思いがいよいよ形になろうとしている。


昨年発行したフリーペーパー

また同祭では、活動してくれるスタッフを募集中。安福さんは「一緒に盛り上げていきましょう」と呼びかけている。
かつては大阪有数の歓楽街であり、映画館も多く存在した新世界。その地で新たな映画の催しが生まれるのを、歓迎したい。
新世界映画祭は、8月3日(土)・4日(日)に開催される。

■リンク
新世界映画祭の8月開催が決定 協力スタッフの募集も【キネプレニュース】
http://www.cinepre.biz/?p=6210
新世界映画祭facebookページ
https://www.facebook.com/pages/新世界映画祭/274752889317741

宝塚を舞台に、名作と学生がコラボ

シネ・ピピアで開催される宝塚映画祭

2000年より毎年開催されている宝塚映画祭。
かつて映画製作所があったことから「映画の都」として栄えた宝塚。その隆盛を今に伝えようと、市民たちが企画から運営まで行う映画祭で、毎年多くの来場客を呼び込んできた。拠点は、宝塚の映画館シネ・ピピア。
また、毎年新たな試みを打ち出すのも特徴の一つ。実行委員となった市民たちがアイディアを出し合い、「それぞれがそれぞれの得意なこと、やりたいことを進めていく」スタイルで、多くのプロジェクトを行ってきた。昨年はネットで資金を募るクラウドファンディングにも取り組み、話題を呼んだ。

第14回となる今回は、「シネマハック100~町の映画館をもっと面白くするアイディア集」と題し、街と映画の関わりを模索する様々な企画を立案。映画の半券やパンフレットを活用したものから、地域映画に絡めたイベント、飲食の新しい提供方法まで、さまざまなアイディアが出そろった。

さらに映画祭の目玉の一つとして、「学生がつくる、宝塚映画」プロジェクトを始動。
これは同祭実行委員で学生の殿西さんと大塚さんが企画したもので、かつての「宝塚映画」を題材とした短編リメイク映画の制作を、学生の手で行うというもの。モチーフとなる作品の選定から撮影、編集までを関西の学生で行い、11月の映画祭当日の上映を目指すという。
同映画祭のホームページでは、「これからの時代を担う若い世代に、かつての日本映画黄金期を支えた宝塚映画製作所で生まれた数多くの名作を知ってもらうと同時に、自主制作映画を制作・発表する機会になればと考えています」とアピールしている。


映画祭実行委員の殿西さん(写真左)と大塚さん

街と映画館の関わりをもっと身近にするアイディア、そして学生たちの宝塚映画への挑戦。今年も宝塚映画祭から目が離せなくなりそうだ。
宝塚映画祭は、11月9日(土)~15日(金)に開催予定。

■リンク
若者が名作宝塚映画をリメイク 宝塚映画祭で学生企画始動【キネプレニュース】
http://www.cinepre.biz/?p=6065
宝塚映画祭
http://takarazukaeiga.com/