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「神戸と映画」の過去と未来語る 第1回イベントが大盛況

「神戸と映画」をテーマに、過去の神戸と映画の関わりや未来の映画作りについて意見を交換し合うイベントが始動。第1回の「神戸・新映画宣言」が神戸映画資料館で6月8日(土)に開催され、多くの人が参加した。


それぞれの思いを語り合う作り手ら

「神戸・新映画宣言」は、神戸ドキュメンタリー映画祭実行委員会が主催する定期イベントの第1回。

まず13時30分からは、「現在から過去へ」と題した第一部を実施。
神戸市観光局が1936年頃に制作した観光PR映画『観光の神戸』などを上映するほか、映画学を研究する神戸大准教授の板倉史明さんが、神戸と映画の関わりについて話した。

板倉さんは、エジソンが発明した「覗き見式映画」キネトスコープが日本ではじめて公開されたのが神戸であることと、その後の新開地での映画館の隆盛ぶり、さらに日本きっての映画解説者・淀川長治さんが神戸出身であることに触れ、神戸と映画の長い歴史を解説。多くの観客が、自分たちの住む街の持つ歴史を振り返った。


スライドも活用しながら解説する板倉准教授

その後はロビーのシネマカフェチェリーに移動し、お茶会を開催。神戸映画資料館の安井喜雄館長を交えながら、かつて神戸にあった映画館についての思い出話に花を咲かせた。


ロビーでお茶会を開催

16時からの第二部は、今神戸で映画作りを続ける人たちを特集。
今年に神戸に拠点を移した若手映画監督の濱口竜介さん、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した神戸在住のアニメーション作家和田淳さん、神戸芸術工科大学で映画制作を教えている石井岳龍さん(旧名石井聰亙さん)の3人が一堂に集い、「神戸で作品を作ること」について意見を交換した。
あわせて、神戸フィルムオフィスの田中まこさん、ラジオ関西「シネマキネマ」の吉野大地さん、旧グッゲンハイム邸管理人で映画にも造詣が深い森本アリさんも参加し、神戸や映画についての思いを語り合った。


登壇した石井岳龍さん(写真左)、濱口竜介さん(中央)、和田淳さん

今年夏に公開を控えている石井岳龍監督の新作『シャニダールの花』は、ほとんど神戸で撮影された作品。以前大手商業映画に携わりながらも、現在こうして地元に密着して作るようになったことについて、石井監督は「時代が変わるに従って、映画作りの方法も変わらざるを得ないだろうと感じていた。それで、神戸を拠点に地域から発信していく映画作りを行おうと思った」と話す。

濱口監督は最初は東京で活動していたが、仙台でドキュメンタリーを作ったことから、「東京じゃなくても映画は作れる」ことを実感したという。
また和田さんは、普段ほぼ1人でアニメーションを制作していることから、「どこでも作ろうと思えば作れる時代になってきた」と話す。「なので今回は、神戸で映画を作ることはどういう良さがあるのかを知りたくてきました」と楽しみにしていることを明かした。
その後、6名は様々な話題を展開。インディーズ映画と商業映画について、映画作りの流行と映画業界の変遷について、予算について、集客についてなど、多くのテーマについて熱い話が交わされた。


多くの人が作り手の声に耳を傾けた

多くの参加者が訪れたことから、神戸芸術工科大学の学生たちの協力でロビーでの中継を実施。会場に入りきらなかった人たちも、話を聞きながら映画の未来について思いをはせた。


ロビーでも多くの人が聴講

「神戸と映画」のイベントは、今後2カ月に1回の周期で開催していく予定だという。
神戸のこれから、そして映画のこれからについて、新たな動きがここから生まれることを期待したい。

また、石井岳龍監督の新作『シャニダールの花』は、7月20日(土)より公開開始。
濱口竜介監督の作品を一挙公開する「濱口竜介プロスペクティブ in Kansai」が7月に開催される。

■サイト
「神戸と映画 第1回 神戸・新映画宣言」
http://www.kobe-eiga.net/event/2013/06/1_8.php
神戸映画資料館
http://kobe-eiga.net/