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クチコませる力(シネ・ヌーヴォ)

シネ・ヌーヴォからの寄稿です)

山添千裕

映画館にとって、重要であり、且つ難しい仕事でもある「宣伝」。
頑張れば頑張った分集客につながる、という訳ではなく、なかなか手応えを感じにくいものなのです。
チラシを撒いた数、ツイッターのリツイート数などでは計れない現実がそこにはあります。東京での評判やSNS内での盛り上がりを、そのまま実感の伴った盛り上がりとして劇場で味わうことが出来た体験はほとんどありません。
逆に、こちらの予期せぬところでヒットを遂げる作品も出て来ます。その多くが「口コミ」によるものです。

2月いっぱい、当館で上映していた『EDEN』。
出演した俳優の方々が「少しでも映画に貢献したい」と、舞台あいさつを買って出て下さいました。約1ヶ月もの間、毎日舞台に立ち、撮影時の裏話を交えながらのトーク、さらには写真撮影、サインにも応え、また、時間がある時には商店街を練り歩き、道行く人、地元のお店に声を掛けての宣伝。
映画そのものの魅力に加え、劇場内・外でのこうしたサプライズが口コミを生み、上映を重ねていくにつれ、問い合わせが増え、客足も増え、最終週には毎回ほぼ満席を記録しました。
映画を観た人がまた人に伝え、コミュニティがどんどん拡がっていく様子を目の当たりにしました。

シネコンのように莫大な宣伝費を掛けられない、マス・コミュニケーションに頼れないミニシアターが拠り所とするのが、まさにクチ・コミュニケーションの力です。
特に、友達、同僚、家族など、近しい人から発せられる「声」は、他のどんな素晴らしい批評や宣伝文句よりも大きな影響力を持っています。

「宣伝」に対して、ミニシアターはまだまだ未熟で、まだまだ受け身です。
クチコミの力を大切にしつつも、自ら仕掛け、誘導し、お客さんに「クチコませる」力が必要になってきます。
ここさえうまくいけば、映画の可能性や、劇場という空間でしか経験出来ないものがあること、世界にはこんなにも熱い映画制作者たちがいて、輝く作品があるんだということを、もっとたくさんの人に知ってもらえるはずです。
映画と人をつなぐ架け橋になれるように、悩みながら模索しながら、クチコませる力を磨いていけたらと思います。

「ゲイ映画」の一言では括れない、笑いあり涙あり、人生のはがゆさとぬくもりを描いた映画『EDEN』は、3/30(土)より十三・シアターセブン、神戸・元町映画館にて上映です。見逃していた方は是非ご鑑賞下さい!

映画『EDEN』公式サイト
http://sumomo.co.jp/eden/
十三・シアターセブン
http://www.theater-seven.com/2013/movie_eden.html
神戸・元町映画館
http://www.motoei.com/schedule.htm