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2019年07月18日(木)
片方は見えるがもう片方は見えない人間の多面性を描く 映画『よこがお』深田晃司監督インタビュー

7月26日(金)に公開の映画『よこがお』。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』(2016)の深田晃司監督の最新作だ。
深田監督にインタビューを行い、今作を製作した背景や、映画を描くうえでのこだわりなどを伺った。

『よこがお』は訪問看護師として働くごく普通の女性、市子の物語。
周囲からの信頼も厚く、訪問先の大石家の長女・基子には介護福祉士の勉強も教えている。しかし、基子の妹・サキが誘拐される事件が起き、意外な人物が逮捕される。事件をきっかけに市子は理不尽な状況に追い込まれ、それまでの生活は崩れ落ちていく。
すべてを失った市子はリサと名前を変え、ある復讐を企てる。

(C)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

主人公の市子を演じるのは筒井真理子さん。深田監督とは『淵に立つ』以来2回目のタッグとなる。
製作のきっかけを伺うと「筒井真理子さんと仕事をしたいというところから始まっています」と深田監督。脚本を書く前の段階ですでに出演依頼をし、主役に決定していたという。
筒井さんの魅力について監督は「脚本を読んでそれをどうその人なりに表現するかというところに俳優のセンスが現れると思うんですが、そこの引き出し方が通り一遍じゃなくすごく豊か。センスのある、経験値も高い人ですけれど、技術でうまいことこなすのではなく、役に対して全身でぶつかっていく、本当にリアルにそこにいる感じが出せる方」と演技を絶賛。
生活を奪われ転落していく市子と、リサと名前を変え復讐を企てる市子というふたつの顔がある難しい役柄だが「筒井さんだからこそ安心して書けた脚本ですね」と大きな信頼をうかがわせた。

『よこがお』というタイトルに込められた意味を「片方は見えるけれど片方は絶対見えないという人間の多面性と重なる」と明かしてくれた深田監督。実はタイトルを思いついたきっかけも筒井さんだったそう。
『淵に立つ』の公開後、筒井さんが取材を受けている新聞の写真の横顔がきれいで「筒井さん主演だったらとりあえず『よこがお』にしておこう、とスタートしたんですけれど、脚本を書いていくうちに意外とはまっているタイトルだと思ったんです」と語る。映画完成後に他の案も出したそうだが、結果として一番しっくりくるとしてタイトルに決定した。

(C)2019 YOKOGAO FILM PARTNERS & COMME DES CINEMAS

今作では筒井さんに加え、市川実日子さんや池松壮亮さんら実力派俳優陣が脇を固める。
市子に対して密かに思いをよせ、物語の重要人物である基子を演じる市川さんは、深田監督の作品には今回が初出演。深田監督は撮影現場で筒井さんと市川さんの演技に対する向かい方がそれぞれ違うことが印象的だったと明かす。
「筒井さんはものすごく準備をしてくる方で台本にもメモがびっしり書いてある。現場でも役に向かって集中している感じなんです。市川さんももちろん準備はされているんですけれど、逆にちょっと驚くくらい天真爛漫な、底抜けに明るい方なんですね。ずっとスタッフたちとコミュニケーションとって笑っている感じ。現場の中ではすごく明るい雰囲気を作ってくれるんですけれど、カメラの前に立つとすっと基子の暗い部分が出てくる。すごく面白かったですね」。

市子をはじめ、登場人物の感情の変化が細かく描き出される今作において、必ずしも順番通りに撮ることのできない撮影現場では、感情のボリュームが前後できちんとつながる様にするのに気を使ったと話す深田監督。俳優とも話し合いながら「感情をぎりぎりまで繊細にイメージしてもらうけれど、最終的には監督の判断で上げたり下げたり。そこは信頼してもらえたのでいい信頼関係ができたんじゃないかと思います」と振り返る。
そして、主要な役に限らず、その周りのキャストについても「隅から隅までうまい人しか出てこないという映画になったと思っています」と自信を見せる。「脚本で書いた内容を現場の俳優の芝居で上回ってくる。そんなのばっかりでしたね」と楽しそうに話す監督に一番印象深いシーンを聞くと、「犯人逮捕直後の、筒井さんと市川さんと市川さんの母親役の川隅奈保子さんが廊下を挟んで三者三様の表情を見せる場面です。あの場面の三人の芝居は絶品ですね。いつまでも見ていたいというくらい本当に俳優たちのうまさが際立つシーンだと思います」と語った。

『よこがお』は女子中学生の誘拐事件をきっかけに物語が展開していくが、フォーカスされているのはあくまでその周囲。市子が彼女自身でコントロールできない事態に巻き込まれていく様子は、誰の身に起こってもおかしくないと思わせる緊張感がただよう。そこには深田監督の作品に共通するこだわりがあった。
「普通の人を描くことのほうが好きなんです。映画を作るとき、極端な例だとマーベルヒーローのような選ばれた人間を主人公にして描いていきますが、私達は選ばれた数パーセントの人間かと言われたらそうじゃない。あくまで普通の平凡な人。でも平凡な人といっても当たり前ですがそこには人生があるしドラマがあるし感情があるし、その感情は特別なものだし。そんな境目でドラマを描いていきたいです」と深田監督。
今回の作品においても「誘拐事件が起きて、普通のサスペンス映画だったら単に人生の特殊な時間です。特殊な時間に巻き込まれた人がそれをどう考えどう解決していくかという、解決がクライマックスになって、エピローグがあって終わる。でも僕たちの人生はそんなクライマックスで終わらないですよね。そのあともだらだらと人生は続いていきますし。2時間の中で何かが始まって終わったかのように劇的に観せてしまうのは何か嘘くさい感じがして、そうではない時間と接続していきたいと意識しています」と語ってくれた。

映画『よこがお』は7月26日(金)に全国ロードショー。関西ではテアトル梅田、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、シネ・リーブル神戸で公開予定。


映画『よこがお』予告編

詳細情報
■上映日程
7月26日(金)~

■サイト
映画『よこがお』公式サイト



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