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2018年06月14日(木)
「泣き屋」テーマに、見たことのない世界を描こうと思った―『見栄を張る』藤村明世監督インタビュー

葬式で参列者の涙を誘う「泣き屋」という仕事を題材にした映画『見栄を張る』。大阪・九条のシネ・ヌーヴォを皮切りに、ロケ地関西での凱旋上映が始まっている。今作が初の長編作品である藤村明世監督にお話を伺った。

『見栄を張る』は、周囲には女優として見栄を張るものの、実際には泣かず飛ばずの毎日を送る絵梨子が主人公。姉の訃報を受け帰郷し、姉が「泣き屋」の仕事をしていたことを知る。絵梨子は女優なら簡単にできると思い「泣き屋」を始めるが、次第にこの仕事の真の役割を知っていく、というストーリー。
藤村監督は、短編『彼は月へ行った』が、第36回ぴあフィルムフェスティバルなどで評価された新鋭監督。先日のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した『万引き家族』の是枝裕和監督が製作総指揮を務めるオムニバス映画『十年』の一篇も担当している。

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(C)AKIYO FUJIMURA

「泣き屋」は現在の日本にはもう存在しない職業だ。藤村監督が「泣き屋」を知ったきっかけは、高校生の時に見たワイドショーだったという。サクラのような役割で紹介されており「人は亡くなってからも人の目を気にしなくてはいけないということが衝撃で、ずっと覚えていたんです」と振り返る。その「泣き屋」を題材に初めての長編を作ろうと思い取材をしていくと、「60年前に存在した泣き屋は、すごく高尚で神秘的な仕事だった」と知り、本作ではそういった側面としての泣き屋を描いていったという。
 今まで手掛けた短編作品では、中学生の話など自分自身がよく知っているもの、身近なものを描いてきた藤村監督。今回は「泣き屋をテーマに、自分が今まで見たことのない世界を描こうと思った」と新たな挑戦だったことを明かし「東京出身なので地元に帰るという感覚もうらやましくて、自分の中のファンタジー、体験してみたいことを描きました」と話す。
 一方で主人公の絵梨子には、自分自身の思いを強く投影しているという。藤村監督は「ずっと助監督をしていて、まだ自分の映画が作れていませんでした。その間に友達は映画を作って賞を取って。『映画監督になりたいけど自分はまだ勝負もできていない』というその時の悔しい気持ちを、絵梨子には結構託していますね」と語る。

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(C)AKIYO FUJIMURA

主人公・絵梨子を演じた久保陽香さんは、藤村監督が前から気になっていた存在で、オーディションを受けないかと監督から声をかけたそう。当初、絵梨子の人物像は、男っぽくがさつなところがあるという設定。久保さんとはかけ離れたものだった。しかし「華やかさと、ずっとこの人を見ていたいという魅力」が決め手となり、出演が決定。絵梨子のキャラクターや脚本も変更し、元々の絵梨子の人物像と久保さんのイメージの中間ぐらいに落とし込んだという。
結果的にそれが久保さんの新たな一面を引き出すことにもなり「久保さんは『全然違う人だねってこの映画を観た人によく言われる』って話してましたね。監督としてはすごく嬉しいです」と語ってくれた。
本作でのこだわりについて伺うと、キャラクター像の作りこみや、絵梨子がCMに出演する「スーパーラビットビール」などの小道具の演出に力を入れたところだという。「メインキャストの、生まれてから今までの細かなバックグラウンドを書き出しました。高校では何の部活に入っていて、初めての恋人とはどういう風に会って、とか」と映画に出てこない部分まで細かく作り上げたという。また監督は「洋服よりも人の個性がでる」と小道具にも力を入れ、書き出したバックグラウンドを美術スタッフにも共有。スタッフから「もっとこんな感じでは?」という別の解釈を提案されたこともあり、その時は話し合ってすり合わせていったという。
また、絵梨子の地元として登場する和歌山県の美しい自然も印象的だ。撮影もほとんどが和歌山で行われている。撮影のエピソードもいろいろあるといい、「和歌山の方は本当によくしてくださいました」と振り返る。「こういう場所が必要なんです、と言うとすぐに探していただくことも。クリスマスや年末年始も撮影だったんですけど、その時もクリスマスケーキやおせち料理をいただいたり。こんなに恵まれることはなかなかないんじゃないかな、という体験をさせていただきました」と現地の熱いサポートがあってこそ出来上がった映画だと話す。

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(C)AKIYO FUJIMURA

最後に、藤村監督の今後の目標を伺うと、「日本以外でも映画を撮ってみたいなというのが1番にあります。あとは恋愛ドラマにもチャレンジしていきたいです」と意欲を見せた。「でもやっぱり、人間を撮っていきたいなと思いますね。人の良い部分も汚い部分も撮れる監督になりたいです」と力強く語ってくれた。
映画『見栄を張る』は大阪・九条のシネ・ヌーヴォでは現在公開中、6月29日(金)まで上映。神戸・元町映画館で6月16日(土)から6月22日(金)まで、ジストシネマ和歌山で6月15日(金)から6月28日(木)まで、それぞれ公開予定。


映画『見栄を張る』予告編

詳細情報
■上映日程
・シネ・ヌーヴォ
 6月9日(土)~6月29日(金)

・元町映画館
 6月16日(土)~6月22日(金)

・ジストシネマ和歌山
 6月15日(金)~6月28日(木)

■映画館
シネ・ヌーヴォ
大阪市西区九条1-20-24、TEL 06-6582-1416

元町映画館
神戸市中央区元町通り4-1-12、TEL 078-366-2636

ジストシネマ和歌山
和歌山市松江向鵜ノ島1469-1、TEL 073-480-5800

■サイト
映画『見栄を張る』公式サイト
シネ・ヌーヴォ
元町映画館
ジストシネマ和歌山



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