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「三代目は、めがね」第3回 映画館で女の子とアルバイトするには(横田陽子)

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最近、いくつか大学に呼ばれて話をする機会があったのですが、質問コーナーの時、決まって聞かれるのは「映画館でアルバイトしたいのですが、どうすればいいですか?」。簡単です。応募すればいいのです。

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今や採用する方になったことに自分でも驚いているのですが、私も大学生の時、映画館でアルバイトしていました。ひとつの建物に3つスクリーンがある映画館で、私が現在働いているシネマート心斎橋のようなミニシアターではなく、大作が上映される老舗映画館でした。一番大きな劇場は300席くらいだったと思うのですが、当時上映されていた映画は『プリティ・ウーマン』や『ターミネーター2』、『おもひでぽろぽろ』などでした。アルバイトは全員で10数名だったと思うのですが、女子は全員学生で、男子はフリーターもいたように記憶しています。

私の育った瀬戸内の田舎町には映画館はあるにはあったのですが、学校が長期休みの時だけアニメや怪獣ものを上映し、それ以外の時はポルノを上映している本当に小さな映画館で、話題の超大作を見るには新幹線が停まる街まで遠出しなければなりませんでした。なので、小さな町の高校で恥ずかしげもなく「映画好き」を名乗っていましたが、実はもっぱらレンタルで見ていたのです。しかし、井の中の蛙を絵に描いたような私は、意気揚々と都会の映画館で「映画好き」をひけらかし、初出勤後ものの数十分でその鼻はへし折られることになるのです。

でも、バイト先の先輩方が皆良い人たちで、そんな私を京阪神の当時たくさんあったミニシアターに連れて行ってくれました。都会の映画館の眩しさに、私の世界は一気に色鮮やかなものになっていったのです。バイト代はほとんど映画料金と飲み代に消えました。仕事が終わってからよく皆で飲みに行って、居酒屋の人に嫌な顔されるくらい終わらない映画話に花を咲かせていました。あの頃のアルバイト経験が、今の私の人生の大きな部分を支えていると思っています。

その後は連載第一回目の「自己紹介、のようなもの」にも書いたような曲がりくねったまわり道が待っているわけですが、支配人になって面接をする立場から映画館でアルバイトしてみたい人にひとことアドバイスするなら、映画が好きなのはもちろんOKなのですが、「年間100本以上映画館で見ています」的な自己紹介よりも、「接客なら大丈夫です」とか「掃除や洗い物も苦じゃないです」といった普通にマジメに働いてくれそうな人を(少なくともシネマートは)希望しています。あと「土日祝、出勤できます」な人、求めてます。

執筆:横田陽子
学生時代に神戸の映画館でアルバイト。卒業後は映画と関係の無い仕事を転々とし、
2006年シネマート心斎橋にオープニングスタッフのアルバイトとして入社。
2013年12月より上映予定表の裏に現「ヨーコのこべや」連載。
2015年よりシネ・ヌーヴォ支配人とミニシアター入門編トークイベント「ヨーコ&ノリコのおしゃべりミニシアター」不定期開催。
2016年11月から支配人業務に従事。

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