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2018年06月06日(水)
「入口と出口の違うエンタメ論」映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』李闘士男監督インタビュー

「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。どういうことなのでしょうか?」という質問がYahoo!知恵袋で投稿されたのをきっかけに、ニコニコ動画で同名の楽曲が発表されたちまち200万回以上の再生を記録、そしてコミックエッセイとして発売されるなどの話題となった『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』。そんなコミックエッセイを原作に、テレビディレクターや映画『デトロイト・メタル・シティ』などで知られる李闘士男監督が実写映画化。6月8日(金)より全国で公開される。

インタビュー後1

映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は結婚3年目を迎えようとしている加賀美じゅんとちえ夫妻の一風変わった夫婦の形を描くハートフル・コメディ作品。ある日じゅんが仕事から帰宅するとちえが口から血を流して死んだふりをしていた。それからというもの、毎日死んだふりをしてじゅんの帰りを待つようになった妻に、じゅんは驚くばかり。理由を聞いても答えてくれないちえに不安を覚え始める…。
予測不能の行動を起こす妻・ちえ役は『余命1カ月の花嫁』『図書館戦争』シリーズなどの榮倉奈々さん。死んだふりに苦悩する夫・じゅんは映画『銀魂』で突き抜けた役から、シリアスな役まで幅広い演技を披露する安田顕さんが演じている。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

本作の見どころのひとつはちえによる死んだふりのバリエーション。はじめはケチャップで作った血のりだったものが、ワニに食べられたり、頭に矢が刺さったり、落ち武者、ドラキュラなど段々とエスカレートしていくことになる。ともすれば妻の毎日死んだふりをすることがただの奇行に見えてしまうようなところを榮倉さんはチャーミングに演じられて楽しく鑑賞することができる。
監督はこのことについて「その人を許せるか」だと語る。「ちえは死んだふり夫をびっくりさせるだけではなく、じゅんの驚く反応を見て必ず『ククク…』と笑う仕草が入っている」これがこの映画でのチャーミングさの正体だと言う。
また、前半では死んだふりというギャグが多めに、しかしだんだんとドラマ部分が重要になってくる本作。前半と後半でギャグとドラマ、そんな相反することを成立させることに榮倉さんは一役買ってくれたという。「それにはキャラクターを実体化させることができるか」と話す李監督。
「ギャグとドラマ両方思いっきり演じることが同一人物の統一性を持たせる。ギャグを抑え目にすると作品がつまらなくなり、ドラマを弱くするとメッセージも届かなくなる」のだと語る。それも監督は「彼女にそんな多くの指示を出してないのに本能的にできていた」と絶賛した。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

そんな映画構成も李監督は「入口と出口が違うこと」というエンターテイメント論に基づいているのだと語る。かつて手がけたテレビ番組『サタ☆スマ』の香取慎吾さんが投稿者の多忙な母親に代わり朝ごはんを作って応援するというコーナー「慎吾ママのこっそり朝御飯」を引き合いに出し、「一見香取慎吾くんが女装して馬鹿な番組かと思ったら、ご飯を作ってお母さんを助けて凄いという反響があった」というエピソードを語る。
そして「例えばビートたけしさんもバラエティでのバカげたことをしたりある時は知的なことを発言したりするけど、映画と人も一緒で期待を裏切るそのギャップが魅力」と力説。監督はかつてテレビで放送されていた「松竹新喜劇」の『藤山寛美3600秒』のことについて触れ、「『吉本新喜劇』は派手で笑わせることが目的なので『コント』になっている。対して『松竹新喜劇』は笑わせることが目的ではなくてメッセージがある『コメディ』として完成している。『笑って泣かせる』ことができるのが今考えると脱帽する」と振り返る。
今作についても「入口がアホな映画だからこそいい」と断言。「映画のテーマなんて10分くらいで伝わるもの、残りの1時間50分どうするのかが鍵」と持論を展開し、「最初から最後まで夫婦のことを考える映画なんて世の中に一杯あるし、見ている方も疲れてくるのではないか。『笑って泣ける』それが映画のもつ良さだと思う」と語った。
また「映画は高尚なものじゃない」とも言い放つ監督。気分転換に見てくれるくらいの感覚が一番良いのだという。ただ、テレビと違いお金を払ってもらって見てくれている、だからこそちょっとプラスになるようなお得感をつけることが大切だと述べた。

(C)2018「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」製作委員会

実は「夫婦の話」についてではなく「如何に相手を思いやることができるか」ということがテーマだったと話す監督。「今回じゅんとちえ、それに影響するような様々な夫婦の形が登場するけど、この中には『俺が、私が』と自分本位の人のキャラクターが登場しない。だからこそ見た後に気持ちいいものになっている。今の映画は自分が何かをしたい、せざるをえない状況のものが多くて、つまらない映画だと興味が薄れて観客との間に壁ができてしまうものが多い。他者を思いやるからこそ上手くいかなくて悩み困っていく、面倒だけどそういうことができる関係って素敵だね」という思いが秘められていると口にした。

インタビューカット1

映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』は6月8日(金)より梅田ブルク7他全国ロードショー。


映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』予告編

詳細情報
■上映日程
6月8日(金)~

■サイト
映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』公式サイト



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