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27年の歴史に幕…高槻セレクトシネマ閉館

大阪・高槻市でミニシアターの営業を続けてきた映画館「高槻セレクトシネマ」(高槻市高槻町18、TEL072-683-1083)が、昨年の9月30日、惜しまれつつも閉館した。  

高槻のセンター街の中、階段を上がった2階にたたずむ「高槻セレクトシネマ」

高槻セレクトシネマの前身は、1983(昭和58)年にオープンした「高槻・松竹セントラル」。元松竹社員の先代が開業し、松竹系作品を封切公開していた。2000(平成12)年には、国道170号線沿いに新シネコン「高槻シネマルート170」を開館し2館体制となる。

2007(平成19)年に誘致を受け、同シネコンをJR高槻駅前に移転し「高槻ロコ9シネマ」に改称。同じく「高槻・松竹セントラル」を別館の扱いで「高槻ロコ9プラスシネマ」と称した。

しかし一昨年の2010(平成22)年、「高槻ロコ9シネマ」を事業譲渡し規模を縮小。「1館しかないのに“プラス”はおかしいだろう」(同館担当者)と昨年2011(平成23)年1月に「高槻セレクトシネマ」に改めた。

 

改称後は、同館スタッフが選ぶお勧め映画を中心に、旧作・準新作あたりの映画を上映していた。ホームページでの情報公開や会員の募集と会報の作成など、固定客の獲得にも尽力。

利用客は高槻市内と市外で「割合は半分半分」だといい、「一人ひとりのお客と丁寧に会話をし、親しんでいただく映画館」として運営を継続していた。「今までは昼間の時間帯、年配のお客様が大半だったが、最近では遅い時間に若い人たちも来てくれるようになった」(同)という。

 

上映する作品も、スタッフが「お客さんにぜひ見てほしい」という動機からスタートし、初めての配給先にも精力的に営業を仕掛けた。

またデジタル上映が急増する中、「フィルムのオリジナルを上映する」ことにこだわり、たとえフィルムの順番が回ってくるのが遅くなった(※編注 数が限られているフィルムを上映する場合、都心の大手映画館が優先となり、地方の映画館は後に回されることが多い)としても、フィルムを待ってくれる客のためにこだわりぬいた。

「フィルムを見るなら高槻で。そういう方が増えてくれることを期待していた」という。

 

今回の閉館の理由について担当者は「運営会社の経営方針の転換・映画事業からの撤退」と話す。「映画館名を改め、『さあこれからだ』と思っていたのに、残念。ネットでの広報に力を入れ、高槻市内だけでなく市外からの若いお客さんも徐々に増えていったところだった」と無念の思いを語る。

同館の会員も閉館間際だというのに会員数が増えていったという。また運営するツイッターアカウント「@takatsukiselect」は現在2000人以上がフォロー。多くのフォロワーから「閉館は寂しい」といった惜しむ声が上がっていた。

 

閉館が決まり、多くの残念がる声を聞きながら、スタッフは最後の上映に向けてさまざまな企画を打ち出した。元町映画館とコラボレーションしたパネルトークや、チェコアニメ特集、日活アクション傑作選、同館人気のシリーズ「女性映画傑作選」のファイナル、マキノ正博「鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)」・松竹寅さんの「男はつらいよ」のクロージング上映など。

 

「『セレクトシネマさんだから見にきたよ』って言ってくれる人がいた。どうしても上映するタイミングが遅くなるのにもかかわらず、うちの映画館が好きだからわざわざ足を運んでくれたことがうれしかった。もっと地元の人にも浸透できるよう活動していきたかった」と担当者は話す。

高槻でミニシアターの灯をともし続けた高槻セレクトシネマの閉館。惜しむファンとともに見守りたい。

同館に設置された、客との交流ノート。多くの閉館を惜しむ声が。スタッフの真摯な返答(赤字)も好評だった。

 

高槻セレクトシネマの受付。上映中の映画や関連するイベントなどのチラシが並んでいた。