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大阪・十三で往年の無声時代劇を上映 坂本頼光さんが活弁ライブ披露

大阪・十三のシアターセブンで7月22日(金)、活動弁士の坂本頼光さんによる活弁ライブ「活動弁士 坂本頼光 in 十三 vol.3」が行われた。

活弁1

昨年2度にわたり同劇場で開催された、坂本さんによる活弁ライブ。
活動弁士とは、無声映画の上映中、登場人物のセリフや話の筋を解説・補完する話し手のことで、過去2回は海外の作品を上映。「次は時代劇が見たい」というお客さんからの声を受け、今回は1931年・片岡千恵蔵出演作の『男達ばやり』(おとこだてばやり)を演目として選んだ。

坂本

チンドンの出囃子に乗って、チェックのボウタイに黒のフロックコートで登場した坂本さん。客席からは「待ってました」と歓声があがった。拍手に包まれながら、まずは前説として話を始めた坂本さんは、東京都知事選など時流のネタに触れつつ、「今日は漫談をしに来たわけではないですよ」と客席の笑いを誘った。
「漫談の先祖はもともと活動弁士にあるんです」と話し、活動弁士と寄席芸人の話題も。
無声映画最盛期の1926年には1万人以上いたといわれる活動弁士は、まさに芸能の中でも花形の商売で、当時新卒サラリーマンの初任給が20円の時代に、月給1000円以上稼ぐ売れっ子もいた、という話を披露し、客席から驚きの声があがった。
活動弁士が流行り、映画館の数が増えたことで、東京から寄席が消えていった原因の一つだという。そうしたこともあって、長らく活動弁士と寄席芸人は相容れない関係だったのが、今では坂本さん自身が天満天神繁昌亭に定期的に出演するなど、互いの活動範囲は密なものとなっているという。

活弁2

続けて、自身の映画フィルムの収集秘話にも触れた坂本さん。急遽、持参した10分ほどの短編を2本、特別に上映した。片岡千恵蔵と同じ時代に活躍した時代劇スター、阪東妻三郎と大河内伝次郎がそれぞれ主演を務めた『喧嘩安兵衛』(1928年)と『血煙高田の馬場』(1928年)の2作品。どちらも、後に赤穂浪士で名を馳せる堀部武庸こと中山安兵衛が主人公の作品だ。
手元のベルをちんと鳴らし、軽快に話し始めた坂本さん。『喧嘩安兵衛』は冒頭から喧嘩や酒が大好きな安兵衛のキャラクターが魅力的に描かれている一方、『血煙高田の馬場』では目まぐるしく動くカメラが戦に臨場感を与えている。坂本さんはこうした作品の背景や説明を上映の前後に挟みつつ、観客を徐々に活弁の世界へ引き込んでいった。

坂本2
上映された『男達ばやり』

そしていよいよ『男達ばやり』の上映へ。合間にやはり坂本さんの解説が入る。
歌舞伎出身の片岡千恵蔵は、あまり運動神経が良くなかったという。そこで、片岡千恵蔵プロダクション製作の時代劇は、「まげをつけた現代劇」と呼ばれ、物語の重厚さには欠けるものの、「今でいう三谷幸喜作品のように」ギャグなどのユーモアに溢れ、軽快なタッチで描かれた作品が多いとのこと。
徳川政権下の江戸の町を舞台にした本作でも、ちゃんばらのシーンはあるものの、それ以外にもたとえば、娘婿に店を奪われた小料理屋の主人を助けるため、30両という大金の金策に走る町奴と旗本の知恵の絞りあいなどが面白い。
映像には効果音や、場面ごとに三味線などの音が付いているが、音楽の切れ間が場面や状況の転換点になっていることが多く、坂本さんの軽快なしゃべり口と合わせてテンポよく物語は進んでいく。
威厳のある殿様の声、強情な町奴の威勢のある声、おどろおどろしいナレーション、酒に酔って調子の良い声など、登場人物や状況によって声色や抑揚を自由自在に操る坂本さん。
「女房の芝居のあざとさよ」と、物語世界から一歩離れ第三者的なツッコミを入れる場面もあった。
そしてラストでは、コメディ映画のような見事なオチを見せ、客席はこの日一番の笑い声に包まれた。最後は、坂本さんより来場の感謝と次回公演への意気込みが述べられ、大きな拍手と歓声に見送られ上映会は幕引きとなった。

上映後、参加者からは「活弁を初めて観たが、分かりやすくて楽しめた」「活気溢れる声がキャラクターを生き生きとさせていた」などの声もあがった。
坂本さんは8月19日(金)に天神橋筋六丁目のブックカフェワイルドパンチで、8月27日(土)に寝屋川市立市民会館小ホールで、それぞれ活弁ライブを開催予定。

詳細情報
■開催会場
シアターセブン
大阪市淀川区十三本町1-7-27サンポードシティ5F、TEL 06-4862-7733

■サイト
活動弁士の家
シアターセブン