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これで撮らなきゃ駄目だと思った 映画への静かな情熱の結晶

大阪・九条にあるシネ・ヌーヴォで映画『xxx KISS KISS KISS』が公開されている。この作品は、脚本家ユニット「チュープロ」が『ストロベリーショートケイクス』などを手掛けた矢崎仁司監督に「キス」をテーマにした脚本を持ち込んだ事により始まったという。

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武田知愛さん(写真左)、出演者の草野康太さん(中央)、矢崎仁司監督


『xxx KISS KISS KISS』は、『儀式』(脚本:武田知愛)、『背後の虚無』(脚本:朝西真砂)、『さよならのはじめかた』(脚本:中森桃子)、『いつかの果て果て』(脚本:五十嵐愛)、『初恋』(脚本:大倉加津子)からなる作品。それぞれの脚本家の物語に、矢崎監督の才能が加わり、オムニバスを超えた一本の作品となった。
今回は、当日の舞台あいさつに駆けつけた矢崎仁司監督、脚本家の武田知愛さん、『いつかの果て果て』出演の草野康太さんの3名に、同作のお話を伺った。

―今作について、意識されていたことを教えてください。
武田 私と朝西さん以外の皆さんは、監督とは初めてのお仕事でした。矢崎監督に撮って頂くことを一番意識していました。
言葉で伝えたい所を、まず映像にかえるとどうなのかをイメージし、矢崎作品の美しい映像に合うセリフをどうすれば良いかをずっと考えました。セリフに関してはいまでもずっと迷っています。
矢崎 脚本家の皆さんと1年間にわたってやりとりをしていました。僕はシナリオの先生ではありませんが、「僕が撮るならこうする」と本気で意見を出して書き直してもらいました。それぞれ、短編という感覚でコンパクトに書いてこられたところからスタートしていたので、人として立ち上がるまで、何度も書き直してもらいました。
武田 私自身は、感情を書くのに言葉に頼ってしまうことが多いんです。でも感情のセリフは極力そぎ落とすことになり、矢崎監督と今回初めてご一緒するメンバーには「書き手が感情をつかんでいれば、どれだけそぎ落としても大丈夫だ」と言いました。シナリオを学んだ学校では、「ト書きに形容詞や感情表現は入れてはダメ」だと言われましたが、今回その言葉の本当の意味がやっと分かりました。矢崎監督が言われている「100人が読めば100本の映画が出来る脚本が良いシナリオだ」ということなんですね。ちなみに矢崎監督が書かれるト書きには余計な言葉が一切なく、シンプルな言葉だけが綺麗に立っているような感じなんです。シンプルな方が、みんなが映像を想起するんですね。私たちは「このイメージが伝わってほしい」と思ったがゆえに、色々書きすぎてしまいました。

―草野さんは、演じられる方としては今回の脚本はどうだったのでしょう?
草野 そぎ落とされているから、分かりやすさが一つもなかったです(笑)。でも、そのままでも良いのかな、と。分かる必要も無いし、脚本を読み解く必要も無い。そういう事を求めて演技をするのでは無く、考えない。感じよう!と思いました。俳優同士みんな迷いながら演じたのではないでしょうか(笑)。
矢崎 僕も答えを知っている訳では無いので、一緒に悩んでいた感じです。
武田 みんなで悩んでましたね(笑)。
矢崎 「人間は、基本的には分からない」というのがやりたいんですよ。芝居でも分かりすぎるとNGです。感情を呑みこんでほしいと思っています。呑みこんだ感情がこぼれてしまう瞬間が綺麗なんですよね。芝居が上手いとか、役になり切るとかに興味は無くて、「今の草野さんを撮りたい」と僕は思っていました。役になり切りすぎると、「もう一回お願いします」となっちゃいます(笑)。

―今回のキャスティングはどのように決められましたか?
矢崎 予算が少ない映画だったので、衣装も自前です。メイクさんもいない事がありました。そこでキャスティングプロデューサーの斉藤さんに、「こういう現場に面白がって(削る)来てくれる俳優さんはいないでしょうか?」とお聞きし、その上で脚本を読んで「やってもいいよ」と言ってくれた俳優さんにお願いしました。ほとんどオーディションはしていないですね。

―いわばインディーズ形式で制作されたわけですが、いかがでしたか?
矢崎 ある意味自由でしたね。いつもプロデューサーが僕に原作を持ってきて要求するのは、過去作品の矢崎らしさなんです。でも今作に関しては僕もプロデューサーの1人。なので、「自分の中の矢崎らしさを全部すっ飛ばして撮ろう!」と。それでも出ちゃうものはしょうがないと思いながら、撮影を楽しみました。「こんなカット、今まで自分の作品で撮った事ないなぁ」と思いながら。
でもそこに俳優さんがいて、スタッフがいて、シナリオライターがいて、かけてくれる映画館がある。それで映画は成立するんじゃないか。これで撮らなかったらどうしようもないな、と。昔は10年に1本位しか撮らない時期もあったんですが、今はスクリーンに映してナンボだなと思っています。「矢崎は駄目だね」と言われても舌を出して撮り続けます(笑)。ずっと一緒に作品を撮ってきたチームもいますし。

―そのスタッフと一緒に本作は山梨県で撮影されたわけですね。監督のご実家を利用されたとお聞きしました。
矢崎 どこかで撮るとなると大変なので「じゃあ、ウチ来るか!」って(笑)。隣の空き家を住めるようにして、スタッフも俳優さんもほぼ雑魚寝でした。

―全編通して山梨県の風景や背景が素晴らしかったです。
矢崎 衣装とロケーションと美術はいつも時間がかかるんです。衣装も自由にみんなで「これ、どう?」って言いながら検討しました。
武田 衣装はすごかったですよ。俳優さんたちもどっさり持ってきて下さって。でも監督がすごく悩まれて、こだわられました。おかげで『初恋』の金魚みたいなワンピースも、素敵なものになりました。

―それぞれ違う話のオムニバスなのに順番が秀逸で、ラストの『初恋』で目が覚めるような終わり方に感動しました。順番はどのように考えられたのですか?
矢崎 編集の日見田さんが、「『xxx KISS KISS KISS』という1本の映画を観たような感じにしたい」と提案してくれて、かなり順番を考えながら編集してくれました。

―キスをテーマにしている本作ですが、よくある映画のキスシーンと異なり、そこでドラマが動くという事はありませんでしたね。
武田 なんら変わらないですね(笑)。観客の皆さんに委ねるというか……。
矢崎 物語は、記憶に触れないんです。気まずい空気感など、「この感じ知ってる」という感覚で自分の記憶に戻って来る。映画館がそういう暗闇になればいいな、と思ってるんです。音楽だと気分が違ったら違う曲に聞こえたり、繰り返し聞くことで好きな所を発見したりするじゃないですか。でも映画は一回で観たことになってしまう。それは悔しいので繰り返し観るに耐える作品にしたかったんですね。観た時によって感じ方が変わるといいなと思ってます。

―この作品が完成してどう思われましたか?
矢崎 この作品が完成したのは、新宿のK’s cinemaで公開される3日前。公開初日に初めてみんなで一緒に観ました。
武田 俳優さんたちも、チュープロも作品の順番をこの時に初めて知りました(笑)。
矢崎 初日の舞台あいさつに登壇してくれた俳優さんが、たくさん来てくださって、その後の打ち上げで朝まで飲みました。普通は一次会で映画の話は終わり、二次会では違う話で盛り上がるのですが、今回はみんな朝までずっとこの映画の話をしているんです。本当に嬉しかったです。

矢崎挨拶1
舞台挨拶を行う3人

 『xxx kiss kiss kiss』は、大阪・シネ・ヌーヴォで3月26日(土)から4月1日(金)はシネ・ヌーヴォXにて公開。また、矢崎さんが監督、武田さんと朝西さんによる共同脚本にて参加した新作『無伴奏』が3月26日(土)より大阪ステーションシティシネマ他にて公開予定。

『xxx kiss kiss kiss』予告編

詳細情報
■上映日程
・シネ・ヌーヴォX
 3月26日(土)~4月1日(金)

■映画館
シネ・ヌーヴォ
大阪市西区九条1-20-24、TEL 06-6582-1416

■サイト
『xxx kiss kiss kiss』公式サイト
シネ・ヌーヴォ