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1.17から21年にどう思う―大阪で『その街のこども』監督らがトーク

阪神・淡路大震災から21年を迎えるのに合わせて大阪・十三のシアターセブンで『その街のこども 劇場版』が上映中。1.17前日の1月16日(土)には同作の監督である井上剛さんと、プロデューサーの京田光広さんによるトークが行われた。

その街トークtop
登壇した井上剛監督(左)と京田光広さん

『その街のこども 劇場版』は1995年の阪神・淡路大震災の傷跡を描いた映画作品。神戸市出身の森山未來さんと、同じく神戸で被災した経験を持つ佐藤江梨子さんを主演に迎え、震災体験を持つ男女が神戸を訪れ、追悼のつどいまでの時間を一緒に過ごすさまを描く。もともとは震災15年目となる2010年の1月17日の夜、NHKのテレビドラマとして放映。大きな反響を呼び、劇場版として製作された。
朝ドラ「あまちゃん」のチーフ演出をつとめた井上剛さんが監督。音楽は同じく「あまちゃん」などで有名な大友良英さん。脚本は『ジョゼと虎と魚たち』や『カーネーション』などの渡辺あやさんが手がけた。
毎年この時期シアターセブンで上映され、トークショーも行われている同作。上映を開始して6年目となる今回は井上さんと京田プロデューサーが登壇し、21年を迎える前夜に、作品や震災についての思いを語り合った。

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『その街のこども 劇場版』©2010 NHK

まず京田さんは、去年の震災20年という節目について、「ほんとうにたくさんの話題が発信されました。テレビでもあらゆる局が、いろんなことを放送しました。でも、いっぱいやっただけなんじゃないか、ということを神戸の人と話しています。ほんとうに大事なのは、21年からの神戸だと思います。それをずっと考えていました」と振り返る。
「そんな中、『その街のこども』は21年経った今年も上映しています。東日本大震災があったり、ほかにも災害があったりと、毎年のように移り変わっていく状況の中で、『その街のこども』はこういった形で変わらず上映させていただいています。ここから、6年前にこの作品を作った時のように、神戸から新しい物語を産み出していくスタートになれば」と21年経った神戸への思いを話した。

「TV放送をすると大体は一過性で終わっていくけど、この作品はそもそも最初から、一過性で終わってほしくないと思っていた」という井上監督。「映画だとこうして後世に残っていくのが良い」と喜ぶ。いまでも毎年観る方がいる作品で、しかも観る度に感じ方が変わっていったり、変わらなかったり、と様々な反応があるという。「いまだに感想をいただくんです。中には、『今、作品の中のルートを実際に歩いています』というメールが来ることも。そんなに自分に引き寄せてくれるんだと。それはすごくうれしい。歩かなくても、劇場で出演者の2人と同じ歩いている気分で見ていただければ」と語る。今回の観客には東京から来て、「この鑑賞の後、三宮と御影の間を歩こうと思っている」という人もおり、「いやあ、うれしいですね。気を付けて、ぜひやってください」と呼びかけた。

その街トーク2
震災から21年目の神戸に思いをはせる京田さん

京田さんの話は、翌日1月17日に毎年実施されている「1.17の集い」についても言及。震災が起きた時間に神戸市の東遊園地で、「1.17」の形に亡くなった方々の数の竹筒を並べて明かりを灯すというものだが、その風景がこの作品の根幹となっている、と話し、「脚本家の渡辺あやさんがその光景を見て、悲しみを涙でなく美しいものとして表現する、ということを感じ取ったところから、この作品が作られたんです」と振り返った。
途中、次の世代に引きつぐためにその「1.17」の文字を変えてしまいたいという動きがあったことにも触れ、「この映画があれば、あの明かりを、神戸の心を表しているあの明かりをずっと残しておくことができる。でも、何かきっかけがあれば変わってしまうんだな、とも感じました。だからこそ、この映画をこうして毎年上映していただくことで、たくさんの方にしっかりと受け継いでいってもらう。とてもありがたいし、これからも続けていきたいと思ってます」と話した。

神戸で取材をしていると、まだまだ伝えることはいっぱいある京田さんは感じるという。「一人ひとりで体験は全く違うし、なかなか語れないこともある。まだまだたくさんの物語が神戸にはいっぱいあると思っているので、この映画を1月16日の夜に上映しつづけたいなと。そしてこの作品を見て語ってほしい。『私も喋っていいんだ』と思っていただければ」と呼びかける京田さん。井上監督も「この作品がまた話し合うきっかけになればいいですね」と話した。

『その街のこども 劇場版』は、大阪・十三のシアターセブンで1月22日(金)まで上映中。震災の1995年生まれの方は1,000円で鑑賞可能。

ちなみに、シネマート心斎橋で『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』の上映もスタートした。これは、井上剛監督・大友良英さんらが手がけた新作で、神戸の女子高生が故郷・福島を目指して旅をする物語。1.17と3.11をつなぐ映画作品だ。

『その街のこども』予告編

詳細情報
■上映日程
1月9日(土)~22日(金)

■料金
一般1,200円、シニア1,100円、高校生・中学生1,000円、小学生以下1,000円、会員1,000円。
1995年生まれの方1,000円(年齢確認が必要)

■映画館
シアターセブン
大阪市淀川区十三本町1-7-27サンポードシティ5F、TEL 06-4862-7733

■サイト
『その街のこども 劇場版』公式サイト
『その街のこども 劇場版』(シアターセブン内ページ)
シアターセブン
神戸から福島へ、震災と歌がつなぐロードムービー 京阪神で上映
『LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版』公式サイト